被爆地から世界へ 次世代が担う核兵器廃絶のバトン
第19回被ばく問題交流集会では、次世代継承に向けたとりくみとして、3人の若者によるトークセッション「核兵器のない未来をめざして」が行われました(1面、『民医連医療』8月号、『いつでも元気』8月号に関連記事)。(松本宣行記者)
私たちは核と無関係ではない
核政策を知りたい広島若者有権者の会(通称カクワカ広島)
田中 美穂さん
カクワカ広島は「なぜ日本は核兵器禁止条約(TPNW:Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons)に参加しないの?」という率直な疑問を抱いた同世代が集まり、2019年に結成しました。広島から選出された国会議員を訪問・面会し、議員がTPNWに対して、どのような姿勢なのかをSNSで発信しています。また、面会だけでなく候補者アンケートなども行います。アンケートに無回答の候補が当選することもあり「とても残念に思う。しかし、それが現状であるということも、有権者として知っておく必要がある」と田中さんは語ります。
カクワカ広島は、月1回のイベントを開催。核兵器問題をTPNWだけでなく様ざまな問題を絡めて企画。拠点となっているブックカフェ「ハチドリ舎」は、6のつく日に被爆者が常駐しており、カフェで被爆証言を聞くことができるのも特徴です。
核開発に費やされる費用も、カクワカ広島は問題視しています。核兵器廃絶国際キャンペーンの発表(2025年6月13日)によると、核保有国9カ国が2024年に核兵器に使った費用は14兆5000億円。1分あたり2757万円の計算です。この費用には、日本の年金積立金管理運用独立行政法人、三井住友銀行、三菱UFJ信託銀行などからの、核兵器開発企業への投資も含まれています。田中さんは「核兵器への加担企業は利用しないという個々人の活動が大切。私たちは核兵器と無関係ではないと認識して声をあげていく必要がある」と訴えました。
戦争は「いのち」が「数」に
熊本・くわみず病院
荒木さくらさん(医師)
荒木さんは、核戦争に反対する医師の会(反核医師の会)に参加しています。被爆医療にかかわった先輩医師たちが立ち上げた団体です。放射能障害を前に医学は無力、いのちを守るためには核兵器を使わせないことが医療従事者の役目、として活動しています。
2023年、同会の若手メンバーと医師以外の職種でできたのが、ABC for peace(Action and Bridge by healthCare workers for Peace)、通称「いっぽプロジェクト」です。アルファベットの「ABC」のように、はじめの一歩を大切にし、日本語の呼び方は「平和の一歩」としました。
同年、イスラエルがパレスチナ・ガザに侵攻を開始。荒木さんは「なにも知らない」と痛感しました。現地でなにが起きているのか、学習会を開催しました。
「私が勤めている病院は、高齢患者が多く、自力で歩けない人もいる。戦争が起きたら、患者はどうなるのか。いのちが数として扱われる。戦力になるかならないかで判断される。民医連綱領と真逆」と、近年の九州の軍事基地化を危惧します。荒木さんは「医療従事者が、一歩止まって、いのちや平和を守るために、声をあげなければいけない」と結びました。
医学生だから声をあげる
長崎大学・医学部
森 爽さん(6年)
反核医師の会には、学生部会があり、森さんはその一員です。「核兵器の被害は治すことができず、予防するしかない。いのちを守る医師をめざす医学生だから声をあげている」と切り出しました。
森さんは第3回TPNW締約国会議に参加。同会議は4つの議題がありました。(1)TPNWの普遍化、(2)科学アドバイザリーグループの役割、(3)被害者支援と環境修復のすすめ方、(4)市民社会の関与です。森さんは「ニューヨークでの学びが、自信につながった」といいます。
現地では世界の医学生と交流し「民医連の被爆医療を伝えると、各国の医学生が感銘を受けていた。『長崎の原水爆禁止世界大会で再会しよう』と約束した」とふり返りました。
「私たちは一人ではない、世界中にユース(若者)がいる。先輩たちの歩みを引き継ぎ、世界に活動をひろめていかないといけない」と決意をのべました。
(民医連新聞 第1833号 2025年7月21日号)
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