第3回評議員会方針(案)のポイント全日本民医連事務局長の岸本啓介さんに聞く いのち優先の社会へ、共同組織とともに
8月23日、全日本民医連は第46期3回評議員会を行います。評議員会方針(案)のポイントを全日本民医連事務局長・岸本啓介さんに聞きました。(長野典右記者)
第47期総会(来年2月)まで8カ月になりました。今回の評議員会方針案では、46回総会方針を情勢、到達をふまえて、補強を行いました。第1章、「第2回評議員会以降の情勢の特徴」として、7月20日、参議院選挙が行われ、自公政権は昨年10月の総選挙に続き、過半数割れになりました。有権者が自民党政治ノーを突きつけました。市民連合が17の一人区で市民と野党の共闘をすすめ、12の一人区で当選し、沖縄でも議席を守りました。野党は減税を公約し、民医連は地域、団体、自治体で、医療・介護を守れと訴えました。一方、与党の補完勢力の躍進で人権を否定し、分断と差別を肯定する政治には、学習と運動の強化で乗り越える必要があります。
骨太方針2025には、オール地域での私たちの運動で「社会保障についてこれまでのコストカットから明確に脱却する」と明記させました。一方社会保障費の抑制のため、11万床の病棟削減やOTC類似医薬品の保険外しなどが盛り込まれています。参議院選挙で保険料を下げて手取りを増やすとの主張もありましたが、税の補てんのない限り、社会保障を削減する「まやかし」であることを理解する必要があります。
今年は被爆80年ですが、戦争の危機が国内外にひろがっています。ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルによるパレスチナ自治区のガザでのジェノサイドなどに対し、非戦、核兵器禁止、国際法と国連憲章を守れとの行動と連帯し、世論をつくっていくことが大切です。国内ではトランプ政権の圧力で、戦争の準備が急速にすすんでいます。アメリカいいなりで日本が米中軍事対決の最前線にさせられようとしています。核抑止では核戦争を止められないことが多くの声となっています。戦争か平和かのつばぜりあいのなか、対話による外交を粘り強くすすめる必要があります。
■緊急行動の成功を
第2章、「47回総会を展望して」では、今期は非戦・人権・くらしを共同組織と守ることを掲げ、とりくんできました。「ケアの倫理」caféの学習討議が各地ですすんでいます。今期の総会運動方針にある、ケアの倫理を深め、医療・介護活動の二つの柱の全面実践で民医連事業所を守り、発展させることにつながります。
第2章の第1節の「地域からいのちとケアが大切にされる社会をめざすとりくみ」では、民医連の事業と経営を守り抜き、地域医療の崩壊を食い止めるための緊急行動を呼びかけています。とりくみの期間は2026年1月末まで。署名の目標は100万筆です。民医連の知らないところでもとりくみがひろがっていくような大きなうねりをつくりだしましょう。全職員や家族、共同組織とともに地方自治体への働きかけも強化しましょう。第3回評議員会では、緊急行動のオール地域でのとりくみ、自治体での決議、開業医や民医連外の医療機関の働きかけなど各地での実践を持ち寄り、交流したいと思います。
介護保険法の施行から25年になります。しかし、公的な介護保障制度として機能不全に陥っています。利用者にとっては制度の相次ぐ改悪で必要なサービスが受けられない、事業所も介護要求や需要に応えきれない実態がひろがっています。慢性的な人手不足や処遇の改善はすすんでいません。介護保険制度のさらなる改悪にストップをかけ、抜本的な制度改善と処遇改善を求める介護ウエーブを成功させましょう。
来年は東京電力福島第一原発事故から15年になります。現在も5万人を超える住民が故郷に戻れていません。福島の復旧・復興の大前提である2051年までの廃炉終了計画は不可能な状態です。政府の原発最大限活用で、再び事故が起こると取り返すことのできない被害を住民にもたらします。原発はゼロにするしかないことをあらためて指摘しています。
■医療・介護構想の経営戦略
第2節では、「医療・介護・経営構造の転換」を呼びかけています。緊急行動提起をたたかいの視点で成果を勝ち取り、危機を抜け出せていない主体的経営改善にあらゆる努力が求められています。新たな医療と介護の変化のなか、地域の受療権を守り、「生きる」をささえる地域の福祉力を高める機能を果たすなど、民医連らしさを発揮する視点が重要です。無差別・平等の医療と介護の灯をともし続け、医療・介護構想と経営戦略を一体のものとしての検討を行いましょう。打開のカギは現場の実態から出発し、全職員の力を引き出し、共同組織とともに地域の視点を重視し前進することです。2040年に向けたリポジショニング、地域医療を守る緊急行動で必ず成果をつくり出し、転換をすすめていきましょう。
■欠かせない外国人労働者
日本社会全体や医療や介護の現場を見ても、外国人労働者なくして社会は維持できません。雇用の現状で職を奪っているのは、外国人労働者ではなく、グローバリズムと新自由主義です。非正規雇用の拡大や賃金の抑制で、多くの労働者が将来の展望を失っています。
戦後80年、いのちとケアが優先される社会をめざして、ケアのあふれる民医連へと前進していきましょう。
(民医連新聞 第1834号 2025年8月4日号)
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