相談室日誌 連載587 本人の意思決定尊重する支援 地域でかかわる自宅への退院 福島
脳梗塞の既往がある50歳代のAさん。自宅で倒れているところを訪問した地域包括支援センターの職員が発見し、救急病院に搬送。診断は脳出血。当院へはリハビリ目的で転院しました。一人ぐらしで、身寄りはなく、生活保護を利用していました。以前の脳梗塞の際もリハビリで当院へ入院し、失語症はあるもののコミュニケーションは可能で、身体機能も自立で退院しました。今回の入院は、失語に加え、寝たきりの状態でした。コミュニケーションが難しく、かかわりがあった地域包括支援センターの担当者もわからない状況でした。
身寄りがないので、自治体に介入してもらい、今後のことを相談しました。金銭管理や生活管理など十分に行うことができない可能性があったため、権利擁護センターへ相談し、行政、地域包括支援センター、権利擁護センター、病院スタッフなどの支援者で何度も協議を重ね、市長申し立てでの成年後見制度を申請しました。
リハビリの介入で、身体機能面での改善がみられ、歩行が可能に。失語症でコミュニケーションが難しい状況でしたが、少しずつ言語聴覚士との意思疎通ができるようになることもありました。本人の意思は、退院後、家に帰りたいということ。この時には、身体状況は多少失禁が見られるものの、自立に近い状態まで改善していました。しかし、一人ぐらしが可能とは判断しづらい状況でした。介護保険も申請し、要介護の認定が出ていたので、危険を考慮すると、施設への入所という意見もありました。何度も本人を交え、意思確認を行いました。その都度、本人は、家に帰りたい思いを支援者へ伝えていました。本人の意思が実現可能なのか、支援者で何度も協議を重ねました。最終的には、本人の希望をみんなで実現しようと、介護保険でヘルパーなどのサービスを活用し、自宅への退院となりました。
意思決定に支援が必要で、そして身寄りがいない人が、増えている現在、自宅での生活は、成年後見人や行政、地域包括支援センター、医療機関などそれぞれが連携する必要があります。本人の意思決定を大切にする上でも支援者の連携は重要だと認識する事例でした。
(民医連新聞 第1834号 2025年8月4日号)
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