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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 踏み込んだ提案で利用者の生活の質が向上 福祉用具導入による住環境改善  生活上のリスク軽減事例  群馬・あおば薬局

 利用者に寄り添った福祉用具専門相談員の実践。第16回全日本民医連看護介護活動研究交流集会(熊本)で、本間隆彦さん(群馬・あおば薬局、福祉用具専門相談員)が発表しました。

 福祉用具専門相談員は、利用者や家族の希望、身体状況、住環境、ケアプランで定めた目標に対し、最適な福祉用具を提供することが使命です。自宅などに訪問し、身体状況、住環境などから、用具の使用や選定についてアドバイスします。今回は、福祉用具の導入で住環境を改善し、生活の質(QOL)向上や生活上のリスク軽減につながった事例を報告します。

■事例紹介

【事例1】Aさん、要支援2。変形性脊椎症から右足の痛みとしびれがあり、歩行が不安定。夫と同居。通所リハビリの最中に、スタッフから「杖がほしいと言っている」と連絡があり、訪問しました。
 Aさんは、すでに杖を1本持っていましたが、「他の利用者が持っている杖がよさそうだったので、それが欲しい」と言います。しかし杖には種類があり、身体状況や使用環境によっても適切なものは違うため、「合わなければ交換することも考えて、購入よりレンタルを」とアドバイス。屋内で使うとの要望でしたが、屋外も想定し「でこぼこ道にも強い、四本足の部分がひろすぎないタイプがいいですね」と提案しました。
 その後、杖を届けるために自宅を訪問したところ、あらたな問題点がわかりました。まず玄関から居間の間に段差が。聞けば「2回ここで転んだ」と言います。浴槽も正方形で、ふちが非常に高いタイプ。またぐことが困難でした。さらにベッドを使わずに布団で寝ていました。トイレでも実際に立ち上がる動作をしてもらうと、体がフラフラしていました。
 以上の点から、玄関と居間の間に床状の土台と一体になった手すりを設置し、段差を解消。浴槽の中と外に土台を置いて、ふちをまたぎやすく、浴槽内でも座れるようにしました。ベッドも要支援のため、介護保険の適用外でしたが、月900円でレンタルできる介護ベッドを提案。トイレにも手すりをつけました。以上の対策で生活上のリスクを軽減。自分の足で歩いたり、外出することが増えました。

【事例2】Bさん、要支援1。変形性膝関節症で立ち上がりが不安定。息子と同居。
 ケアマネジャーから「ベッドからの立ち上がりが難しく、手すりの設置を」と連絡があり、自宅を訪問。介護ベッドは見たところ問題がなく、高さも十分だったため、適切な手すりを選定しました。
 一方、ソファが非常に低い上にふかふかでした。試しに座ってもらうと、立ち上がれません。ベッドよりソファの方が問題でした。ソファに対して直角に手すりを設置していましたが、片手でつかまる形となり、力が入りにくく、実際にやってもらうと立ち上がれませんでした。そこで手すりの形状を変更し、体の正面に来るようにして、両手でつかめるように。これでソファからの立ち上がりを改善できました。

■訪問しないとわからないことも

 実際に訪問し、確認しないとわからない問題が多数あります。用具の些細(ささい)な変更が、利用者の生活に大きく影響することもあるため、選定には専門相談員の知識、経験と提案力が求められます。
 利用者や家族の状況、生活環境などをつかむため、他職種との連携も重要です。介護が必要な高齢者が、どのようにすればソファやベッドから立ち上がりやすいかなど、介護技術を多職種から学ぶことも提案力向上につながります。
 これからも民医連の福祉用具貸与事業所らしく、利用者に寄り添い、一歩踏み込んだ提案ができるように、多職種連携をすすめながら、柔軟に対応したいと思います。

(民医連新聞 第1835号 2025年8月18日号)