困難な時代こそ共同組織とともに 全日本民医連共同組織委員長会議
全日本民医連は、6月30日~7月1日、東京・平和と労働センターで、第46期共同組織委員長会議を開催しました。共同組織の活動はコロナ後、健康づくりやまちづくりの活動が発展する一方で、世代交代、担い手、拡大など、課題も山積しています。6年ぶりの対面の会議で、共同組織の課題と未来について、膝を突き合わせて議論しました。(松本宣行記者)
地域要求にこたえ民医連運動発展のために
当日は25県連から86人が参加。共同組織委員会委員長の石塚俊彦さん(千葉民医連)が問題提起を行いました。
高齢化社会の進行、地域コミュニティーの弱体化、社会保障の切り捨ての政治がすすむなかで、共同組織の意義は、ますます高まっています。一方で、共同組織の現勢は346万5769人(2025年3月末時点)で、経年的には減少傾向です(図1)。『いつでも元気』誌も4万7374部(2024年2月号)と、ピーク時の5万7284部から1万部弱の減誌となっています(図2)。石塚さんは「高齢化や地域コミュニティーの衰退、政治的・経済的停滞のなか、共同組織の存在意義がますます大きくなる一方で、共同組織の担い手不足や、そのために地域要求に応えきれないなどの課題もある」と語ります。
2024年1月1日に発生した能登半島地震では、石川県輪島市の4世帯に1世帯が共同組織に加入していたことが、被災地支援で重要な役割を果たしました。石塚さんは「民医連運動は共同組織とともにあった。共同組織が大きくなることが、民医連運動の発展には欠かせない。困難なときだからこそ、400万を超える共同組織を展望し、民医連の運動をさらにすすめよう」と呼びかけました。

地域と組織の力を育む指定報告
子ども班会「コペルくん」
指定報告では、大阪・医療福祉生協おおさかの梶真実さん(事務)が、子ども班会「コぺルくん」について報告。子どもが学習や体験を通じていろいろなことに興味・関心がもてる機会をつくり、若い世代とも結びつくとりくみに。子どもの貧困が注目され、子どもが安心できる居場所として始め、今年で8年目です。「コペルくん」の名前は吉野源三郎『君たちはどう生きるか』(1937年、岩波書店)に由来します。体験の乏しさも貧困ととらえ、科学実験・ダンス・音楽・お話会・からだの不思議など幅ひろいテーマで活動。医療生協としても子育て世代と結びつく場所となっています。
友の会倍化で経営改善
東京・健生会の松崎正人さん(事務)は、民医連が地域住民ともう一度しっかりつながり直すため、友の会会員の倍増を提起。三多摩健康友の会は2年かけて議論し、2万5000人から倍の5万人をめざすと決定し、現勢は2年前を突破しました。松崎さんは「人口は減少している。しかし、がんばれば増加はできる」と言います。地域の孤独・孤立に民医連と共同組織が向き合い、診療所が地域の困ったに積極的にアウトリーチ。共同組織と職員の共同のいとなみがすすむことで、診療所の患者数も増加。事業所の経営改善にもつながり、法人内のモデルケースになりました。
担当者研修を実行委で
長野・健和会の寺澤由弘さん(事務)は、県連が共同組織担当者の育成のため10年以上開いてきた研修会を報告。コロナ後、再開にあたり、担当者自身が実行委員会形式で研修会を企画・運営し、情報交換や交流、学習を重ねました。「担当者同士で情報共有することで、自組織の長所・短所を可視化できた」と寺澤さん。他事業所のとりくみを知りたいという現場の声から、班会グッズも紹介し合いました。参加者から「役割を再認識」「1年目職員にも伝わった」などの声が。生協と医療法人の違いや強みも学び合い、視野もひろがりました。企画に担当者の要求を反映させ、拡大強化月間に向けて士気も高まっています。
『いつでも元気』で力量アップ
岐阜・みどり病院の中尾美絵さん(事務)は、「経営改善をすすめるために『いつでも元気』を活用して、職責者の力量アップをめざしている」と発言。コロナ禍3年目の2022年に、事務長となった中尾さんは「課題は山積していたが、解決のカギは職責者の力量アップと、職員が共同組織を認識することと考えた」と言います。
学びを深めるために同誌を活用。課長会議のグループ討議で同誌を活用し始め、課長職の購読率100%を達成しました。「購読し始めた主任から職場で発信してもらい、主任級の購読率も向上している」と中尾さん。現在、医師の購読率を引き上げるために、医系学生に同誌を届け、学生時代から共同組織を知ってもらうようにと、とりくみをすすめています。
新入職員の『元気』購読率93%
福岡・千鳥橋病院の松尾俊宏さん(事務)は、昨年から新入職員研修で、実際に共同組織の班会に参加するようにしたと報告。「『温かく迎えてもらい、自分もがんばりたい』といった前向きな感想が多かった。積極的に地域住民とふれあいたいという感想が占めた」と、紹介。今年は友の会会員に病院へ来て、活動について語ってもらい、「医療従事者と地域住民が密につながることで安心してくらせる」との感想も。こうしたとりくみで新入職員の『いつでも元気』の購読率は93%になりました。
全国から学ぶキラッと光る活動
グループ討論では、事前課題「キラッと光る活動紹介シート」をもとに、各地の実践を交流しました。全体会では、グループごとに選んだ特徴的なとりくみを報告しました。一部を紹介します。
住民200人超が集結
和歌山中央医療生協の中嶋一雄さん(事務)は「初(はつ)午(うま)の餅まき」を紹介。和歌山県の海南市・海草郡の恒例行事で、約40人のボランティアが、2日間かけて餅をつくり、事業所でお菓子とともに、餅を投げて配ります。中嶋さんは「わずか5分のイベントだが、地域住民200人以上が集結し、この行事が新規の組合加入につながる」と意義を語りました。
不参加ゼロをめざす
福島・浜通り医療生協の工藤史雄さん(事務)は「加入増は頭打ちとよくいわれるが、活動があれば増える余地はある」と切り出しました。約400人規模の支部で、組合員の班会・活動不参加ゼロをめざして、活動への参加者を増やすため、支部長が様ざまな班会を企画。運営委員と理事が、ウォーキング指導や、すこしお指導、声かけ・見守りのポイントなど3つの講座とグループディスカッションを通じてスキルアップし、活動への自信を深めました。
介護保険のすき間「ご近所さん」
兵庫・尼崎医療生協病院の大澤芳清さん(医師)は、4つの助け合いの会「ご近所さん」を報告しました。「『ご近所さん』は有償ボランティアで10分100円、60分500円。年間で約4200件の依頼がある」と言います。背景として、介護保険改悪で、訪問介護ではできないことが増えていると大澤さんは指摘します。可視化された課題は、尼崎市との懇談の議題になっています。
夏の安全、地域で確保
福岡・健和会の光廣郁さんは、熱中症対策について発言しました。光廣さんは「友の会と社保協と法人職員で、北九州市と2回の懇談を行った」と説明。健和会が熱中症普及啓発協力団体になり、診療所の1階で友の会も利用する「暮らしの保健室」を、クーリングシェルターとして開放する協定を締結しました。
住民参加の経営理解
大阪・淀川勤労者厚生協会の前田元也さん(事務)は、県連での予算づくり交流集会の分散会に、共同組織の分散会があることを紹介しました。「共同組織の役員も参加することで、民医連の経営を知ってもらう」と言います。分散会の議論で、共同組織から無料低額診療事業について学びたいとの声が出て学習会を実施。約300人が学び、「無料低額診療事業推進士」として認定。世話人が困窮者を事業所に紹介し、つながることができたと報告しました。
(民医連新聞 第1835号 2025年8月18日号)
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