相談室日誌 連載588 成年後見制度は誰のもの 権利擁護に制度活用を(東京)
80代男性のAさん。在宅で独居生活をし、夏になると熱中症になり、救急搬送となったことがしばしばある人です。
自宅で倒れているところを発見され救急搬送、急性期病院では誤嚥性肺炎を治療しました。既往に梗塞後遺症や認知症があり、ADLの低下で、自宅退院は難しいと判断。治療後の療養先の検討が必要な状況でしたが、身寄りがなく、成年後見制度の活用に関し急性期病院入院中に、地域包括支援センター、行政と面談を重ね、申請をすすめることとなりました。成年後見制度の活用は行政と相談中でしたが、市長の申し立てが必要で、制度活用まで時間がかかることもあり、急性期の治療を終えているAさんは当院へ転院となりました。転院時のAさんの様子は車いすが必須のADLで失禁が目立ち、認知症の進行も見られ、確かにひとりでの生活は難しい状態でした。
入院から数カ月たったところで申し立ての目途が立ち、家庭裁判所の本人面接も済み、保佐相当で裁定になりました。これで成年後見制度活用がすすむと思われましたが、保佐人の候補者が見つかりませんでした。Aさんは中学卒業後、大手製造業メーカーに勤務。転勤を経て現住所地に40代から居住していました。厚生年金はあるものの負債が多く、今後、施設に入所するには本人の収入だけでは賄えない可能性が高いため、保佐人を請け負ってもらえる人が見つからないとのことでした。進展もないまま数カ月が過ぎ、再度、地域包括支援センターや行政と検討を重ね、ようやく法人後見で保佐人を請け負ってもらえる事業所が決まりました。申請手続きを検討してから9カ月が過ぎようとしていた頃でした。
同じ事象が他の地域でも起こっていることを県連内のSWからも聞きました。まじめに生活してきた人が、権利擁護が必要な場面で、誰も請け負わない現状に何とも言えない憤りを感じてしまいました。
今後、さらに高齢化率は増加し、Aさんのような境遇に陥る人は増えると思います。制度のほころびを感じざるを得ません。権利擁護が必要な人が、必要に応じ適切に制度活用ができる世の中になってもらいたいと感じています。
(民医連新聞 第1835号 2025年8月18日号)
