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民医連新聞

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こんなにヤバい!! 日本の食糧事情 (21)下水汚泥肥料の中にPFAS

 肥料価格の高騰がすすみ、輸入に頼るリン酸アンモニウムの代替として、リン酸供給源に下水汚泥肥料の利用がすすめられています。
 下水処理場や工場内施設から流れる排水には、環境汚染物質が含まれています。これらは、微生物によって分解・吸着されて浄化され、その過程で微生物の死がいが沈殿し汚泥となります。汚泥には植物の栄養となる窒素やリンが含まれるため、肥料としての活用が推進されています。
 資源の有効利用という点で活用が期待されていますが、この下水汚泥肥料からは重金属に加えて、自然界でほとんど分解されないPFAS(ピーファス=健康被害が心配されている有機フッ素化合物の総称)が検出されたとの報告があり、その影響が懸念されています。
 PFASは「永遠の汚染物質」と呼ばれ、水に溶けやすく、地下水や河川に流れ込み、水や土壌を汚染します。さらに環境中に長く残るため、汚染された土壌で育った農畜産物を食べ、汚染された水を飲むことで、体内に蓄積していきます。
 農民連食品分析センターが、5県から集められた下水汚泥肥料6サンプルを調査した結果、すべての肥料からPFASが検出されました。PFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)、2種類のPFASの合計で、最大は103・4マイクログラム(1キログラムあたり)でした。その他は21・3、3・1、2・5、2・0、1・5マイクログラムの順でした。
 農水省も、汚泥肥料に含まれるPFASについて、その蓄積量や農作物への移行、人体への影響などを調査・研究しています。
 全国から集めた86点の汚泥肥料を分析したところ、PFOSとPFOAが70%以上のサンプルから検出されました。検出濃度の平均はPFOSで4・9マイクログラム、PFOAで16マイクログラム、最大では
PFOSが54マイクログラム、PFOAが250マイクログラムでした(いずれも1キログラムあたり)。
 農民連は、人体への影響が心配される物質を農地に蓄積させないため、下水汚泥肥料や農業用水を対象とした、PFASの大規模な調査運動を呼びかけています。


かつまた まさし 農民運動全国連合会の常任委員。新聞「農民」の編集長も務める。

(民医連新聞 第1836号 2025年9月1日号)

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