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民医連新聞

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副作用モニター情報〈644〉クラリスロマイシン、リスペリドン併用による意識障害

 クラリスロマイシンはマクロライド系の抗菌薬、リスペリドンは幻覚や妄想・興奮などの精神症状を抑える非定型抗精神病薬です。
 リスペリドンはその薬理作用から、「器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性」に対する適応外使用の保険適用が認められています。せん妄は入院という環境の変化によって、患者の20~30%程度に発症するといわれており、高齢や認知症の患者に処方されているケースが多いと予想されます。
 今回はクラリスロマイシン服用中にリスペリドンを服用し、意識障害が出現した症例が報告されました。

症例)80代女性、体重39kg
入院1日目 認知症、BPSD(認知症周辺症状)の診断
拒薬、介護抵抗、興奮、暴力あり、メマンチン、クエチアピン開始
 リスペリドン内用液1mgを頓服
入院7日後 肺MAC症に対して、めまいのため中断していたクラリスロマイシン再開
入院9日後 リスペリドン内用液1mgを2回頓服
入院11日後 リスペリドン内用液1mgを2回頓服
入院12日後 リスペリドン内用液1mgを1回頓服
15時 意識障害出現 JCS100
アームドロップテスト(+)、両上肢麻痺(-)、両眼縮瞳あり、内服中止
他院受診にて、薬剤性意識障害と診断
入院13日後 覚醒し、徘徊など出現
リスペリドン内用液を少量から再開

 リスペリドンは体内でCYP2D6および3A4により代謝されます。本症例では、クラリスロマイシンのCYP3A4に対する強い阻害作用により、リスペリドンの血中濃度が上昇し、作用が増強したと考えられます。
 クラリスロマイシンは相互作用がある薬剤が多く、添付文書上にすべての薬剤名が記載されているわけではありません。相互作用の多い薬剤を使用する際には、十分注意しましょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

副作用モニター情報履歴一覧

(民医連新聞 第1836号 2025年9月1日号)