診察室から 町の読書会に参加して
私は長崎で家庭医・総合診療医として働いています。
レジデントの時代から、地域志向性のケアについて学び、学会では同世代の医師が地域で図書館をやったり、コーヒーの屋台を引いたりしながら、地域で活動している姿を眺めていましたが、自分も何かできればと考えつつ、日々の仕事に追われて一歩を踏み出せずにいました。
昨年から久しぶりに、地元に戻ることになり、懐かしい町を散策していると、「Booksライデン」という、雑居ビルの2階にある、少し入りづらそうな本屋を見つけました。
SNSで調べると、どうやら読書会をやっているらしいということがわかり、おそるおそる参加してみました。
テーマはハンナ・アーレントの『人間の条件』。これまで何度も挫折してきた本ではありましたが、思い切って参加してみると、様ざまな年齢や職種の地元の人が集まり、みんなでいっしょに悩みながら、難しい本を、少しずつひも解いていく、とても素敵な会でした。
その次にレヴィ=ストロースの『野生の思考』をみんなでなんとか読了し、次回はミシェル・フーコーの『監獄の誕生』にチャレンジする予定です。
難しい本が並びますが、そこは店主のこだわりで、1人では挑戦しづらい本を、あえてセレクトしているようです。
同じテキストを読んでも、響く部分や引っかかる箇所が、人それぞれ異なり、参加者のみなさんの話を聞くだけでもとても参考になります。
普段の病院とは違うコミュニティに属することで、様ざまな町の知り合いが増え、また日々の臨床の悩みも、違った視点で捉えられるような気がしています。
今後は自分たちで主催して、様ざまな本を、ケアの視点で読み解く読書会などを、開ければと考えています。
みなさんの町にも読書会はありますか?
(川口雄史、長崎・上戸町病院)
(民医連新聞 第1836号 2025年9月1日号)
- 記事関連ワード
