相談室日誌 連載589 孤立した生保利用者の支援 情報共有連携で柔軟な対応(栃木)
60代前半男性のAさんはアパートで一人くらし。6畳一間の部屋に、ゴミや趣味のフィギアと漫画本であふれ足の踏み場はなく、エアコンなど家電製品は壊れたまま、布団の上で過ごしていました。40代で多発性脳梗塞発症後、血管性認知症のため就労できず生活保護を利用。子とは音信不通で、唯一連絡を取っていた妹もかかわりを拒否、相談できる人はなく孤立していました。今年5月、路上で体調不良になり救急搬送、所持金がないことで支援が始まりました。
公共料金、火災保険料などの滞納で、携帯電話会社や債権者からの督促状が届いていました。関係者に連絡をとると自己破産の手続き中で、2015年、2023年にも自己破産、今回で3回目であることがわかりました。Aさんに連絡手段がなく、自己破産の手続きのための弁護士とのやり取りができません。裁判所に提出する書類は収支状況の報告書作成が必要で、自己作成は難しく金銭管理の支援を開始。行政に首長の申し立てによる成年後見制度利用を相談し、8月下旬に申立て予定になっています。1日1000円と決めても、大好きなたばこを2箱、3箱と買い、月末には生活費が足りずフードバンク支援や漫画本を売り生活費に充てて乗り切ってきました。
自宅には残薬が4000錠以上。血圧は180を超え、頭痛の訴えがありました。訪問看護や訪問薬剤を利用し、当初支援目標は朝食後薬の飲み忘れをなくすこと。訪問看護中心に声を掛け続け、血圧は安定、頭痛の訴えはなくなりました。介護保険の申請で要介護1に認定となり、ヘルパー支援利用に向け自宅内の片づけのため、自治会から軽トラックを借り、職員4人でゴミを処分しました。酷暑でエアコンが使えない室温は40度を超え、熱中症の危険性が高まりました。バランスのとれた食事、たばこを吸い続けてしまう環境を変え、他者との交流を楽しめることを期待しデイサービスの利用が始まりました。
長年支援からこぼれ落ちてしまったAさんの支援は始まったばかり。認知症も進行し自宅での生活はいつ限界を迎えるかわかりません。しかし「Aさんらしさ」を試行錯誤しながら追求し、情報共有・連携を密に、柔軟に対応し支援を続けていきます。
(民医連新聞 第1836号 2025年9月1日号)
- 記事関連ワード
