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民医連新聞

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いのち・人権を守るために 第3回評議員会の発言から

 8月23日に開いた全日本民医連第46期第3回評議員会(前号1面)の発言から、概要を一部、紹介します。

平和な社会実現のために 

 滋賀・東昌子評議員は、「平和といのちをつなぐ碑」建立活動を紹介しました。県内に憲法9条の碑がないため、滋賀・九条の会などが碑の建立を天台寺門宗の三井寺に相談。2025年4月、「三井寺に『平和といのちをつなぐ碑』を建てる会」が発足しました。
 僧侶を中心に、11月3日の除幕式に向けて募金活動。目標300万円に対し、7月までに245万円が集まっています。東さんは「様ざまな団体とともに地域で運動をひろげ、憲法9条を守る努力を続けたい」とのべました。
 千葉・宮原重佳評議員は、千葉民医連医師委員会で「研修医の育成に関し、平和・人権を考える研修はもちろん、被爆者医療の後継者にもなってほしい」という期待を込めて、研修医や学生を原水爆禁止世界大会に送り出したことを発言。今年は4人の1年目研修医全員と医学生2人が参加。参加者からは「医療従事者として、いのちと健康を守る立場から、戦争や核に反対する重要性を痛感した」などの感想が。宮原さんは「アウトプットの場を通して本人の学びを深め、運動をひろげることを目標に今後も企画検討したい」とのべました。
 沖縄・玉城全一郎評議員は辺野古新基地建設について発言。沖縄は今年、本土復帰から53年ですが、現在も広大な米軍基地が集中。米軍人・軍属による事件や事故、基地由来の環境問題など過重な負担が続きます。辺野古新基地建設では、大浦湾の埋め立て資材を搬出する安和桟橋などの警備だけで1日2000万円以上の税金が費やされています。玉城さんは「『ぬちどぅ宝』を重んじ、戦や争いのない世界恒久平和のため、がんばっていく」と語り、来年1月の名護市長選の支援も訴えました。
 徳島・吉野才治評議員は、戦争の実相を次世代へつなぐとりくみを紹介。徳島民医連は、市内の戦争被害の学習機会がないことを受け、2025年2月の「事務職員のスキルアップ研修」で、徳島大空襲の学習とフィールドワークを行いました。参加者からは「知ることが大事」「空襲の歴史をもっと知らせたい」などの感想が。
 8月9日には、徳島で民医連にかかわる看護学生を中心に学び交流する「第21回中四地協DANS」が開かれ、事前にスキルアップ研修の受講者が徳島の看護学生をつれてフィールドワーク。DANS当日は、その徳島の看護学生が戦跡ガイドをつとめました。

安心して暮らせるまちを行政とともに

 北海道・太田眞智子評議員は人口減少地域の医療介護環境の変化で、行政と関係機関の連携について報告。浦河町は救急医療をささえてきた日赤病院が医師・看護師不足で4病棟が2病棟になり、日赤看護学校は入学者減により27年末で閉校。2つの訪問看護ステーションも人員不足で休止。道内全179市町村で「望む介護を受けられずに転出した住民がいる」と回答した自治体は75市町村。浦河診療所、勤医協福祉会と友の会は、年2回町長と直接懇談の機会があります。太田さんは行政と地域の実情、方向性を共有し、すすむことが不可欠と強調しました。
 愛媛・末光一元評議員は、補聴器助成のとりくみを紹介。2022年、愛媛医療生協の支部運営委員会で班会参加者が「耳が聞こえなくなったので班会に行けない」と言ったことが話題に。「班会に参加できないと、認知症や身体能力も衰えてフレイル状態になる」と、補聴器購入助成実現に向けた署名運動を始めました。
 約300筆の署名を集めて申し入れたある町では、町長が「妻も難聴で苦労している。よく検討する」と答え、2024年4月から助成制度が実現。現在は県内20市町中、8市町で実現しています。

人間の尊厳を守る生活保護を

 東京・石田美恵評議員は介護の側面から生活保護行政の実態を報告。地域包括支援センターの管理者から「看多機の利用者を担当できないか」と相談が来たケースを紹介しました。80歳代、要介護4の女性で、脳腫瘍の末期でベッド上の生活。主介護者の息子が心臓の手術を受けて失業し、親子で生活保護の利用に。看多機のケアマネジャーが福祉事務所に相談に行くと、「生活保護利用者が看多機を利用するのはぜいたく。デイサービスと訪問看護のプランに変更を」と指示されました。この女性は医療的ケアの必要度が高く、主治医も看多機の利用継続を訴えましたが、退けられました。石田さんは、各自治体で生活保護利用者が人権侵害を受けていないか、目を光らせる必要性を訴えました。
 群馬・瀧口俊生評議員は、桐生市生活保護違法事件について発言。3月28日、桐生市の生活保護違法問題に関し、第三者委員会が最終報告を提出し、組織的な違法行為と断定。再発防止策も盛り込む内容に。再発防止策として相談業務は録音・録画、当事者を含む外部検証委員会の設置、ケースワーカーの増員、職員の人権教育の徹底などを提言。しかし市は、印鑑の不正使用の組織的な運用を認めたものの、保護却下の決済慣行、文書の偽造は認めず、指示役の元部長の退職金も返還しないなど、不十分な点も。瀧口さんは、「桐生市生活保護問題を他山の石にしてほしい」と呼びかけました。

健康不安に寄り添って  

 兵庫・藤岡裕子評議員は、県内のPFAS汚染に対するとりくみを紹介。2023年から学習会を重ね、2024年7月には専門チームを設置。同年10月に東神戸病院でPFAS相談外来を開設しました。2025年5月に、全額自費となる血液検査の負担を軽減するため、寄付を募って初の検査を実施。検査を受けた32人中6割が米国科学アカデミーの基準(20ng/mL)を超えるPFASを検出。兵庫民医連は、血液検査や学習会を通じて、職員や地域住民の理解を深めるとともに、実態を解明し、行政にも働きかける方針です。
 岐阜・松井一樹評議員は、東京電力福島第一原発事故の避難者に対する健診について発言。県内には今も避難住民が100人以上いて、「寄り添う健診が大切」と切り出しました。
 岐阜民医連は2013年から県外避難者の健診を毎年実施。2026年度に国からの支援金が廃止されますが、同県連は健診を継続する方針を確認しています。松井さんは「避難住民の健康問題と、事故に対する国の責任追及を継続的にとりくむ」とのべました。

被災者にやさしい行政の実現に向けて

 石川・藤牧圭介予備評議員は、能登半島地震・豪雨災害の被災者に対する行政のあり方を問いました。同県では、被災者対象の国保、後期高齢者医療制度の医療費一部負担と介護保険の利用料の免除が、今年6月末で打ち切られました。生活再建中の被災者は経済的な不安を抱えており、石川民医連の事業所では、無料低額診療事業や障害者手帳の申請の支援などで、受診抑制が起きないようにとりくんでいます。藤牧さんは「他県では免除が続いているのに、石川県が打ち切ったのは被災者を見捨てるもの」と批判。免除復活を求めて署名運動を行うことを表明しました。
 神奈川・野末浩之評議員は、神奈川みなみ医療生協が大規模災害への備えとして、学校の体育館などに冷房設備を整えるよう行政に申し入れたことを紹介しました。
 同生協は8月1日に三浦町、6日に葉山町に申し入れ。経済的困難者のエアコン購入・設置費用を助成することとあわせて要請しました。医療生協組合員は「東京の小中学校(避難所指定校)の体育館では冷房設置率が92・6%、神奈川では15・3%であまりに低すぎる。国の補助に上乗せして整備率を上げるように県に働きかけを」と求めました。

医学対活動の強化・継承を

 栃木・関口真紀評議員は医学対活動について発言。高校生一日体験で知り合い、今年、大学入学後に奨学生になったAさんの成長に触れました。
 Aさんは、奨学生などを対象とした毎週火曜日の学習会に毎回参加。小学生対象の夏休み学習支援や、原水爆禁止世界大会に代表を送るためのカンパ活動にも積極的に参加し、広島の世界大会にも行きました。島根で行われた医学生ゼミナールにも参加し、全国の医学生と交流。夏のふり返りでは「いちばんの思い出は民医連だった」と語っています。関口さんは、未曽有の経営危機のもとでも医学生への働きかけをおろそかにせず、強化、継承する重要性を強調しました。

地域医療の崩壊を防ぎ受療権を守るために

 東京・岡村博評議員は、2024年度の診療報酬マイナス改定に対し、期中改定をめざす「オール地域」のとりくみについて発言。
 みさと健和病院(埼玉県三郷市)では、今年3月に日本医師会と6病院団体が診療報酬の期中改定を求める合同声明を出したことを機に市の医師会に働きかけました。結果、医師会を取り扱い団体とする請願署名運動に発展。市内60の医療機関のうち、32の協力を得ました。請願署名は市議会に提出。国に対して期中改定などを求めるこの署名は、6月10日の本会議で賛成多数で採択されました。
 和歌山・深谷郁予備評議員は今年6月に全日本民医連が提起した「民医連の事業と経営をまもり抜き地域医療の崩壊をなんとしてもくい止めるための緊急行動提起」の運動を報告しました。
 和歌山生協病院は職員1人が10人を目標に署名を推進。外来、検査課、健診課などに署名を置いて呼びかけ、診察室でも医師が依頼。「病院がそんな状況とは知らなかった」との声が寄せられるとともに、「質問されても答えられない」という職員の不安にこたえ、学習もすすめていると話しました。
 鹿児島・山下義仁評議員も、緊急行動提起のとりくみを報告。鹿児島生協病院院長が県医師会長と懇談したことや、地域の3つの病院を訪問した際には「ぜひ署名を集めたい」といずれの病院も快諾してくれたことを話しました。
 民医連事業所の診療圏内にある517の医療機関にも署名用紙を送り、10以上の医療機関から429筆の署名が。「なかには患者に呼びかけるために用紙をコピーして50筆、100筆超の署名を届けてくれた医療機関も」と山下さん。地域医療の危機が迫っており、受療権の危機であることを伝えて運動をひろげる決意を語りました。

(民医連新聞 第1837号 2025年9月15日号)

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