診察室から 魔法の言葉
「君は素晴らしい民医連の医師になる」。北海道民医連の医師になりたてのころ、どの会でのことであったかはすっかりうろ覚えになってしまいましたが、間違いなく初対面の堀毛先生ががっちりと私の手を取り、いきなり掛けてくださった魔法のようなこの言葉を、忘れることができません(きっと堀毛先生は覚えていらっしゃらないと思いますが…)。今もこの魔法は私のすすむべき道を照らしてくれているように感じています。
初期研修医時代、なにをするにも不安いっぱいの私の横に静かに座り「先生は大丈夫」といつもやさしく声を掛け続けてくださった中野先生。先生が使われていた聴診器とボールペンを真似してお守りのように使っていました。「明日あなたが受けられる手術のことを私に説明してください」。手術について何度も時間を掛けながら丁(てい)寧(ねい)に患者に説明し、最後はこの質問で患者の理解度を確認し「その通りです。一緒にがんばりましょう」と締めくくるのがとても素敵だった田尾先生。先生の説明が今も私のお手本です。「私たちは地域に生かされているんだよ」。いつも謙虚で、決して派手ではないけれど、こつこつと日常診療を継続する大切さを背中で語り続けてくださった苫小牧の宮崎先生。「視診、聴診、季節性、発見する喜び…バードウォッチングも診療につながるんだよ」と、うれしそうに私を小鳥たちがさえずる森に連れて行ってくださいました。北見での地域医療研修の経験が民医連での後期研修を決意する契機となりましたと語ってくれた、いまや立派な血液内科医として活躍されている原田先生。「先輩たちが育ってきた環境を信じたい」のタイトルで先生が寄稿された北海道民医連新聞の記事の切り抜きを今も大切にしています。やっと民医連らしい医師になることができたかな?…と思えるようになった医師22年目の今日このごろです。たくさんの仲間たちと学び合い、ささえ合いながら、困難な道であっても楽しく歩いて行く自信に今は満ちています。(菊地憲孝、北海道・オホーツク勤医協北見病院)
(民医連新聞 第1838号 2025年10月6日号)
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