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民医連新聞

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私がここにいるワケ 民医連から鍼灸の灯消さない東洋医学で選択肢ひろげる 京都・川端鍼灸治療院 鍼灸師 岡 貞充さん

 民医連で働く多職種のみなさんに、その思いを聞くシリーズ16回目は、京都・川端鍼灸治療院で働く、岡貞充さん(鍼灸師)です。(長野典右記者)

 幼少の頃、ネフローゼ症候群の腎臓病にかかった岡さん。ステロイドホルモンの投薬で副作用も経験し、養護学校に通学しながら数年間の闘病生活を余儀なくされました。この経験から将来は医療従事職に就きたいと考えるようになりました。副作用が少ないとされる東洋医学を学びたいと、鍼灸を学ぶ専門の大学に進学。整形外科医院の勤務をへて、2003年、当院に入職しました。

■50分の治療時間

 岡さんが治療中に気を配っていることに「治療の50分の会話を大切にすること」があります。鍼灸治療は全身を総合的に診察するため、患者と時間をどう共有するかが大切。日常のストレスや本心を聞くことができます。リラックスモードで、感情のケアにもつながります。根本には心と身体は一つである「心身一如」という考え方を大切にして、治療に生かしています。
 20代後半の顎関節症の男性患者はいつも顔を隠して来院していました。引きこもり状態でしたが、治療中に会話を重ねることで、卓球に誘うこともでき、今では就労支援を受けながら社会復帰をめざすまでに回復しました。

■市内の公的助成を実現

 当院にある共同組織の「よもぎの会」は、「いつでも、どこでも、誰もが安心してかかれる鍼灸治療」をめざして1990年に発足。「東洋医学の正しい理解と啓蒙」「会員相互の親睦と交流」「鍼灸治療にかかりやすくするため、健康保険の適用をめざす」ことを柱に活動しています。職能団体と会の運動で、京都市の「はり・きゅう・マッサージ施術費助成事業」が実現しました。75歳以上の人に1回1000円の割引券を年4枚交付する制度です。
 また同会は鴨川の河川敷で、気功・太極拳教室も行っています。共同組織拡大で仲間増やしのために、定期的なお灸体験学習会も実施しています。

■併設診療所とともに

 当院は今年で設立50年。併設の川端診療所とともに、東洋・西洋医学を融合させた医療をめざし、鍼灸治療を行っています。週2回の夜間外来、1カ月の患者件数は皆で協力し外来約280人、約210人往療に行っています。
 岡さんは「併設診療所に漢方の外来があることが強み」と言います。診療所から患者の紹介もあれば、当院から診療所に紹介することもあり、症状に応じ、患者の選択の幅がひろがっています。
 自費診療もあることから、様ざまな患者にふれる機会があり、社会の縮図として貧富の格差を感じることもあります。一般的な治療院では件数が少ない生活保護利用者の数も多い現状も。患者に保険適用できるような工夫に民医連らしさを感じています。法人の共済の事業として、職員も利用しています。「職員をケアできる場にもなればと」岡さん。
 現在、4人の鍼灸師が勤務していますが、症例検討やコミュニケーションも充実しています。岡さんにとって職場は「私の好きな場所」と語ります。

■地域に根差して

 鍼灸治療は医師の同意書があれば保険適用できますが、まだ限定的なもの。受療率は1割もなく、20代ではその半分とのデータがあります。岡さん「ぜひ鍼灸はどんなものか体験してほしい」と。地域で3人集まればツボ押しや鍼灸の体験を行っています。「医学的な根拠も示しながら、適応範囲を拡充させたい」と言います。
 民医連に加盟していた鍼灸治療の事業所も減少しています。「鍼灸治療の事業所として灯を消さないための後継者の育成や、地域に根差した鍼灸院として活動を幅ひろくひろげたい」と抱負を語りました。

(民医連新聞 第1838号 2025年10月6日号)

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