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民医連新聞

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共同組織拡大強化月間 福井・つるが生協診療所 30周年 記念のつどい 共同組織とつながり地域の希望をつむぎともに歩む

 今年、福井県敦賀市にある、つるが生協診療所が開院30年、併設している在宅総合センターなごみが20年を迎えました。9月14日に市内で「記念のつどい」を開催し、445人が参加しました。(高瀬佐之記者)

職員のきずな

 オープニングは、地元で活動する氣比(けひ)太鼓の演奏。職員と組合員もいっしょに周り太鼓を披露。会場を沸かし、大きな掛け声が参加者を包みます。
 その後は、創設時の懐かしい映像を上映し、歴代所長や職員、組合員のリレートークも。15年間所長を務めた大門和さん(医師)は、「患者といっしょに良い医療をつくるところに、私たち組織の意義がある。共同組織のありかたも時代とともに移り変わるなか、このような集いを開催し、ともに前進していることを嬉しく思う」と語りました。組合員理事の笠原恵美子さんは、組合員ルームについて紹介。診療所敷地内にある組合員ルーム「晴ればれ」は、気軽に集まって話したいという組合員の思いから開設。「2025年3月の時点で、福井県嶺南ブロックの組合員は3771人。30年前にゼロから始めた仲間増やし。明日からまた皆さんといっしょにがんばりたい」とのべました。

創設の歩み

 敦賀市はかつて医療過疎化地域とされ、多くの住民が不安を抱えていました。福井県医療生協は、地域住民と建設運動をはじめ、1995年に当診療所を開設しました。開設から3カ月がたつと、患者数は1日で120人を超え、2年半でカルテ数は6000を超えました。これは敦賀市民の一割が受診したと言える数字です。初代所長を務めた平野治和さん(医師)は「診療におわれ目まぐるしい日々のなか、組合員とのいとなみが当時も花開いていたことを懐かしく思う」とふり返ります。
 つどいには、歴代の所長から、創設に携わった組合員や元職員も集まりました。
 診療所から約4km離れている、今回の会場。開会前、職員は「参加してくれるだろうか」と不安を漏らしていました。しかし職員の不安とは裏腹に、開会後の会場には座りきれないほどの人が集まりました。
 後半は、当診療所でおなじみの寸劇。医師、職員と組合員で「これからを考える ~あなたと家族のために~」と題し、敦賀市で活用されている「あんしん連携ファイル」の啓発劇を披露。あんしん連携ファイルとは、自身の思いを事前に医療機関に伝え、ともに考える連携ツールのことです。変装をして登場する職員や医師に、会場は笑いに包まれました。

この地だからこそ

 福井県には、15基の原発があり、現在5基の原発が稼働しています。ここ敦賀市にも原発が。1995年に市内の高速増殖原型炉「もんじゅ」で事故が起き、2016年に廃炉になりました。しかし、今30年ぶりに敦賀原発の4号機増設が計画されています。
 平野さんは「ミサイルやドローンが世界で飛び交い、不安定な情勢のなか、深刻な懸念を抱いている」と訴えました。また、診療所で事務長を務めていた林広和さん(事務)は「未来につながる問題だからこそ、地域の希(こいねが)いを紡ぐ運動が求められる。いのちと健康を守る声をあげ続けたい」と語りました。

次世代につなげる

 組合員の橋詰喜代さんは「今後も活動をひろめたい。この地域でくらす私たちのためにも、診療所を守りたい」と緊急署名を他の参加者に呼びかけていました。
 師長の西村さくらさん(看護師)は「職員の学びにもなり、患者や利用者以外の人にも知ってもらう機会になった」と話します。所長の天津亨さん(医師)は「予想以上の人が参加し、組織の強みを改めて実感した。今後は人口減少に伴う患者数減少が課題。小さな診療所では、政府が求める医療DX化に対応が追い付かない状況。これからも共同組織とともに、地域医療に貢献していきたい」と共同組織拡大強化と今後を見据えます。
 職員と、地域の組合員と歩んできた30年。確かなつながりが、明日の原動力になります。

(民医連新聞 第1838号 2025年10月6日号)