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民医連新聞

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副作用モニター情報〈647〉 アナストロゾールによる関節症状

 アロマターゼは男性ホルモンのアンドロゲンを女性ホルモンのエストロゲンに作り替えるだけでなく、乳房などにある脂肪組織からもエストロゲンを作り出す酵素です。この酵素の働きを止めるアロマターゼ阻害剤は閉経後乳がんの内分泌療法の中心的薬剤で、少なくとも5年にわたる長期間服用が求められるので、一度副作用が出現すると治療完遂の障害となります。今回は、アロマターゼ阻害剤の代表的な薬剤であるアナストロゾールによる関節症状について紹介します。
 アナストロゾールの副作用は、市販後調査では3435例中38例、当モニターには2025年4月の時点で11症例中5症例が関節症状の訴えで、中止に至るケースもありました。発症までの期間は服用開始後6カ月以内に多く、約2週後に発現した症例も報告されています。
 当モニターに報告された5例を要約すると、
(1)服用開始8カ月目の右手首の痛み。
(2)服用6カ月目に左第1指関節のばね指、服用9カ月目に両膝痛、服用10カ月目に起床時の両手指のこわばりと関節痛、服用13カ月目に両足首と両肘にも痛みとこわばり感が出現。
(3)服用開始1年で手の関節痛、中止3カ月で痛みは7割程度に減少。
(4)開始約6カ月後に関節痛、中止約2カ月後に回復。
(5)開始まもなく、手足、膝の関節痛出現、アナストロゾールからエキセメスタンへ変更後5~6カ月後に改善。

 関節痛やこわばりが現れる部位は、手→膝→腰→首→肩の順に多いといわれており、手のこわばりは朝に強く現れ次第に良くなる、腱の障害「ばね指」は通常発症する親指や中指だけでなく小指にも見られる、という独特の症状があるとされています。

 低エストロゲン状態は、軟骨代謝異常や軟骨潤滑液の粘性の変化、関節内の水分減少、関節をささえる筋肉や軟骨の衰え、腱や腱鞘の弾力低下を引き起こし、関節痛や腱鞘炎などの関節症状の原因になると考えられています。そして、骨粗しょう症のチェックも忘れずに。

(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

副作用モニター情報履歴一覧

(民医連新聞 第1839号 2025年10月20日号)