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民医連新聞

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診察室から すべての経験は糧になる

 9月中旬に院長から執筆の話がきて、この文章を書くことになりました。選挙前の文章を書くことはありますが、それとはだいぶ違うので、どうしようかと頭を抱えているうちに、とうとう締め切りの前日になってしまいました。医師になって十数年たちますが、先送り癖は治らないので、一生治らないのだろうなと思いながら、自分の仕事を振り返ってみました。
 目立った研究や活動はしていないので、あるのは資格ぐらいです。内科、循環器、救急、研修関連、嚥下機能評価、中心静脈カテーテル…なんだかまとまりがありません。すべての経験は糧になる。研修医のときに、院長から教わった言葉通りに生きてきた結果みたいです。
 とはいえ、まったく違う分野の経験が別の分野でいきることはよくあることかと思います。今、私の家には年長さんの女の子と、2歳の男の子がいます。とってもかわいくて癒やされるのですが、機嫌が悪くなったときの暴れようったらないのです。抱きかかえても逃げていってしまうし、私の顔もひっかくし。泣く子には勝てないという言葉は本当なのだなと、日々感じています。理不尽な子どもの不機嫌に耐えることで得たことは、どうしようもないことへのあきらめと忍耐力ではないかと思っています。「先生、外部研修にいってから優しくなったね」と看護師に言われることが多いのですが、子どもが生まれたのも同じタイミングで、実はそちらの方が大きいのではないかと思います。
 でも、自分にはどうしようもできないことを受け入れて、共存していくという経験は、きっと子育てだけではないのでしょうね。家族の介護だったり自分の病気だったり。お互いの抱えている事情に配慮しながら、思いやって仕事ができると、みんなが働きやすいのだろうなと思います。そういう意味でも多様性を受け入れやすい、民医連で働いているのは幸せだなと思いますし、多様性を受け入れられるような世の中になるよう、行動したいと思います。

(林充那登(みなと)、長野中央病院)

(民医連新聞 第1840号 2025年11月3日号)

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