相談室日誌 連載593 行政側が社会的入院を要請 緊急搬入に福祉事務所長同行(宮崎)
当院にソーシャルワーカーとして勤務するようになって20年以上がたち(正確な数字は書きたくないほど…お察し下さい)、この相談室日誌も今回で5回目になります。今まで、行政の施策の不備や対応の悪さをお伝えすることが多かったのですが、たまには良い話をお届けしたいと思います。
今年の夏、60代後半の無保険の男性Aさんが当院に救急搬入されました。無保険者の救急搬入は珍しくないのですが、Aさんが住む市では無保険者を受け入れてくれる病院がなかったようで、わざわざ30km以上離れたところから市を越え、当院に搬入されました。幸い、入院が必要な病気は見つからなかったのですが、電気が止められているなど生活面での課題があり、独居生活を続けるには不安が残る状況でした。
実はこの時、Aさんの住む町の包括支援センター職員といっしょに福祉事務所長が部下を連れて当院に来ていました。包括支援センターから生活保護の相談を受けていた矢先の救急搬入だったそうです。診察室で入院の必要がないことを医師が説明したところ「社会的に入院させてもらえないか、生活保護は許可できますので」と福祉事務所長が本人の代わりに医師に相談しました。
本来ならば介護施設にお願いするのですが、介護認定を受けておらず、緊急の入所施設も空いていないとの話でした。社会的な入院も仕方がないか、と医師と話し合ったのですが、その日はあいにく空床がないことがわかりました。しかし、生活面での課題が残る場所に帰すのも心配なため、男性が住む市の隣の町の病院に社会的入院を相談してみようとの話になりました。
入院の相談をした病院は公立の病院なのですが、総合診療医のプログラムに参加していて地域医療にも力を入れており、当院の専攻医や当院で研修を受けた医師が複数所属していることもあって、受け入れてくれました。Aさんは入院先の病院の住所で生活保護を申請でき、生活面の課題を少しずつ解消することができているそうです。
生活保護申請の水際対策に頭を悩ませることも多いなか、福祉事務所長が駆け付けてくれたのは初めてでした。このような福祉事務所が増えて欲しいと願う日々です。
(民医連新聞 第1840号 2025年11月3日号)
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