診察室から 現場で生かす経営学
全国の病院経営が非常に厳しいと大々的に報道されたのは記憶に新しいと思います。
以前は、いつも医局会議で会計報告を聞いてはいるものの、専門用語もよくわからないし、「そんなことより、早く新しい電気メス買ってくれよ~」などと思うだけでした。病院で働いていても、その辺りのセンサーが鈍いというか、あまり実感が湧かなかったところがあります。そんな時、ある先輩医師から、「経営を学んでみないか?」と声をかけていただきました。医学以外の専門知識がゼロの私ですので、最初は冗談だろう、くらいに思っていました。しかし、医療を取り巻く環境が悪化していく様を目の当たりにして、自分の生活・自分の家族を守るためにもやはり経営学の知識は必要なのではないか、と思うようになりました。
趣味のバイオリンを新たに購入するために準備していた資金を全額授業料に充て、MBAを取得すべく、とある大学院に入学しました。クラスには実に様ざまな業種の方が所属されており(医療機器業界、製薬業界、会社経営者、大企業の役員、公務員、農家、看護師長、大病院の医師…)、私のような何も知らない人間が入学してしまったのは間違いか何かかと、少し恥ずかしい気分でした(個人的には米農家の人が学びにいらしているのが興味深かったです!)。
医療費の削減は腹立たしいことではありますが、それも経済の仕組みや経営の仕組みを知らないと、どの部分がどのような理屈で間違っているのか、改善のための具体的な指摘や提案もできないと思いました。また、知識をつけておいた方が、受け手にメッセージが伝わりやすいとも。
この年齢になって、自宅で子どもと机を並べて課題やらレポートやらにとりくむのは大変な面もありますが、知らなかったことを学ぶのって楽しい! と感じている今日このごろです。
(冨田礼花、長野・松本協立病院)
(民医連新聞 第1841号 2025年11月17日号)
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