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民医連新聞

民医連新聞

今こそ人権を守る運動を 第46期人権としての社保運動交流集会

 10月23~24日、全日本民医連は「第46期人権としての社保運動交流集会」を都内で開催し、84人が参加しました。今年7月に行われた参議院選挙とその後の情勢をふまえ、憲法や人権としての社会保障について学び、全国の実践を交流しました。(髙瀬佐之記者)

 集会に先立ち、俳優の斉藤とも子さんによるオープニング文化企画を実施。参加者は、斉藤さんの語りで、憲法の理念をもとに、平和、環境、いのちを守ることの大切さを胸に刻みました。
 開会あいさつは、全日本民医連社保運動・政策部の森実美佐さん(看護師)。
 森実さんは、映画「宝島」で描かれた戦前・戦後の沖縄の現実に触れ、「知らないふり、関係ないふりをする無関心こそが、当事者を傷つける加害になる。誰もが安心して生きられる社会のために、人権を尊重し、権利としての社会保障の実現に向けて、自分ごととしてともに考えよう」と呼びかけました。

人権・倫理の「タイムアウト」を

 問題提起は、全日本民医連社保運動・政策部長の柳沢深志さん(医師)。参議院選挙後の情勢、政策動向を踏まえて、大軍拡や改憲を阻止し、いのちとケアに国の予算を使うことを社会的な合意にしていくこと、いのち・憲法・綱領の視点を貫き、受療権を守る運動を強めることなどを強調しました。
 また、日常の医療・介護現場での気づきを共有し、ソーシャルアクションにつなげていくために、「5分間でも、業務や会話のなかに人権や倫理に意識を向ける『タイムアウト』の時間をつくろう」と呼びかけました。
 その後、7つの指定報告。各地のとりくみを紹介しました。

仲間とともにたたかい続けよう

 2日目は、東京都立大学教授の矢嶋里絵さんが「知的障害のある人と家族の人権 ~津久井やまゆり園事件を契機に~」の学習講演(6面に概要)。その後、班討論(スモールグループディスカッション)で、文化企画、講演、問題提起、指定報告を受けた感想、実践、課題や悩みなどを交流しました。
 ある班では、「憲法の学習を押し付けていないか」との問題意識が出ました。職員らが学びを「やらされるもの」ではなく、「自分からかかわりたくなる」体験としてひろげていくことの大切さを話し合いました。各班で、積極的な交流が行われ、参加者も笑顔に。
 閉会あいさつは、全日本民医連事務局次長の西坂昌美さん(事務)。「人権を守るということは、すべての人の尊厳を守るということ。憲法の理念を胸に、学びと実践を重ねながら、仲間とともに平和と人権を守り、たたかい続けよう」と締めくくりました。

オープニング企画から

『あたらしい憲法のはなし』朗読と被爆80年に寄せる思い

俳優 斉藤とも子さん

 斉藤さんは1999年の舞台「父と暮せば」出演を機に被爆者と出会い、その一人、故・肥田舜太郎さん(埼玉民医連医師)からもらった核廃絶運動のペンダントを「お守り代わりにしてきた」と紹介。戦後初期に文部省(現・文部科学省)が作成した「あたらしい憲法のはなし」を朗読しました。
 朗読後、斉藤さんは「『戦争は国の責任であり、再び戦争をしない』と明記されていることにあらためて感銘を受けた。この憲法の精神は決して変えてはならない」と強調。環境問題にも言及し、異常な暑さや豪雨、熊の出没など、「自然の変化は人間が地球を壊してきた結果。戦争は最大の環境破壊」と指摘し「核戦争が起これば地球は滅びる。これは政治的な話ではなく、人が生きていくための根本の問題。生活的な問題として考える必要がある」と語りました。
 同時に斉藤さんが訴えたのは、東京電力・福島第一原発事故の被害。事故当時は小学生だった女性が今年、大阪高裁で陳述した内容も朗読。「放射能を気にする方がおかしい」という風潮のなかで福島でも自主避難先の兵庫でも傷つき、今も心の傷は癒えないことなどがつづられていました。斉藤さんは、年間の被ばく線量1ミリシーベルトの基準を福島だけ20ミリシーベルトにし、除染の責任から逃れ、住民の帰還を求める国の異常さも告発しました。

指定報告から

リハビリ技術委員会情勢学習と選挙アンケート

青森・健生病院對馬健洋さん(理学療法士)

 青森民医連のリハビリ技術委員会では、参議院選挙に合わせて情勢学習とアンケートを実施。職員約120人を対象に、勤務時間内で学習会を開催しました。社会保障費削減の背景などを学び、参加者の約8割が積極的に反応し、政治への関心を高める契機となりました。選挙後の職員アンケートでは、投票率が前回より5%上昇し、「投票しても変わらない」との回答が減少。職員の政治への関心にも変化が見られました。對馬さんは「今後も学習を重ね、関心を行動につなげたい」とのべました。

群馬県桐生市における生活保護違法事件民医連としてのたたかい

群馬民医連町田茂さん(事務)

 桐生市は、市職員が生活保護の申請を妨げ、保護を打ち切るなど、組織的な人権侵害を行っていました。民医連などの支援団体は、被害者とともに国家賠償訴訟を提起し、刑事告発も行いました。その過程で、市職員からの内部告発が。「恫喝や怒鳴り声が常態化していた」などの実態が明らかに。全国の報道機関もいっせいに取材し、最終的に「制度的違法」と認定されました。町田さんは「あきらめずに現地調査を続け、被害を掘り起こし、報道で世論を動かしたこと、関係団体が連携したことが運動をささえた。今後も監視と支援を続ける」と力を込めました。

南浜ファミリークリニックのとりくみ

千葉民医連石塚俊彦さん(事務)

 同クリニックでは、職員同士の意見交流、風通しのよい環境づくりのため、毎週火曜日の昼礼に全職員で患者事例を共有し、多職種で支援方針を検討しています。
 報告では、糖尿病の高齢女性や、韓国出身で非正規滞在状態の高齢女性など、複数の事例を紹介。これらの事例を全職員で検討し対話することで、SDH(健康の社会的決定要因)を見る視点を培う機会になっています。石塚さんは、「民医連の理念を軸に、医療のなかに人権と連帯を根づかせたい。今後も寄り添う診療を続けていきたい」とのべました。

社保Q学習会を気軽に楽しく

三重・みえ医療福祉生協久野浩司さん(事務)

 三重民医連では、職員が気軽に参加できる社保学習会を開催。当初は、忙しいなかでも15分だけなら参加できるだろうと開催。「やっていることをまず知ってもらう。関心がある回に気軽に参加できる」ことを大切にしています。現在、様ざまな職種の職員が講師をし、自分の経験や感じたことを言葉にするなかで、視野や働き方に変化が生まれています。久野さんは、「社保委員会はやさしくなれる場所。こうした共感や職員の気づきこそが、自分にとっての『生きる楽しさ』で、学習会を続ける理由」とのべました。

1職場1アウトリーチ地域の声に耳を傾けて

大阪・淀川勤労者厚生協会前田元也さん(事務)

 淀川勤労者厚生協会は、1職場1アウトリーチとして、地域での学習会や健康づくり活動を活発に行っています。職員が講師を務め、住民同士が語り合い、ともに考える場として運営。また、自治体や社会福祉協議会、学校などと協力し、健康チェックや相談会を開催。前田さんは、「こうした地域活動が職員自身の学びにもつながっている」と強調し、地域の人とともに育つ医療の実感を得ていると話します。「今後も地域の声に耳を傾け、学び合いながら活動を広げていきたい」と語りました。

中国・四国地協のとりくみ

山口民医連末永博由紀さん(事務)

 中国・四国地協社保平和委員会は年1回、「地協交流集会」を開催し、フィールドワーク学習をしています。近年では、山口県や島根県で開催し、「人間魚雷・回天基地跡」を訪ね、戦争の実相を知り、原発問題をテーマに、環境と平和を結びつける学習をしました。
 さらに山口民医連では、こうした企画運営に、若手職員を積極的に参加させています。職員からは「最初は面倒だと思ったが、やってみたら楽しく学べた。自信になった」などの声が。末永さんは、「若手が成功体験を重ねることが、運動を次世代へつなぐ力になる」とのべました。

介護ウエーブのとりくみ

福岡・佐賀民医連今村直美さん(事務)

 福岡民医連では「介護ウエーブ」の活動をすすめています
 社会保障の情勢学習や、地域の実態把握と情報発信から、政府や自治体への働きかけも行っています。地元選出の国会議員に対し、要請活動を行い、議員による国会質問へつなぎ、地方自治体に対しても交渉を行い、制度改善に向けた要求をしています。今後は地域での連携、共同の輪をひろげることが課題です。
 今村さんは、「介護現場の課題を社会全体で共有し、改善に向けた具体的な行動へとつなげていきたい」とのべました。

(民医連新聞 第1841号 2025年11月17日号)