相談室日誌 連載594 未来のSWのために困難事例支援増えるなかで(青森)
当院へ搬送されてきた70代後半男性Aさん。離婚で家から出ることになり、県外の親類宅で生活していました。その後、地元での生活再開に、住まいの当てがないまま車1台に全荷物を積み戻ってきました。駐車場で数日夜を明かしますが、夜間に転倒し頭部を裂傷、通行人に発見されA病院へ搬送。傷は縫合し問題ないため、生活基盤調整の支援として当院へ再搬送になりました。
支援で大きな課題は家族関係。当初家族はかかわりを拒否し、私たちとつながることを制限していました。不本意で離婚となったAさんの本音は「家族といっしょにいたい」で、私たちの知らないところで家族と連絡をとっていました。転入転出に必要な書類や貴重品が積んである車を家族が持ち帰ってしまったため、医療保険加入の手続きがうまくいかず、転出先の役所から再発行してもらうことになり、一時的に病院に住所を置き加入できました。
経済的に一般のアパート契約はできず、軽費老人ホームを中心に検討しましたが保証人の大きな壁に阻まれなかなか決まりません。めどがつきそうな時にAさんが自己判断で自分の通帳を家族に渡す出来事が。「自分にかかわってくれるなら」と渡したようです。それが理由でその施設入所は破談に。結局家族は再度かかわりを拒否し、通帳は後日、家族から返還されました。最終的には養護老人ホームへ入居しましたが、見学同行や書類整備、生命保険給付金の申請や自家用車の売買、各種証明書の再発行などあらゆる手続きをSWが対応しました。退院も同行し送迎や荷物整理や契約も立ち合いました。
SWは医療現場で患者の生活や療養支援を担う役目ですが、年々、身寄りなしなどの困難事例の支援も増えています。すべてSWが行うのか? 行政の役割は? 社会的な支援体制は? と悩む日々です。個人の力量、各医療機関だけの責任で支援するには限界があります。社会的課題として行政や関係団体などが向き合っていくものと感じます。また業務が多忙化し、後継者不足につながるのではと危惧します。社会福祉士の専門性を存分に発揮し、社会問題へ対応する未来の専門職らのためにも、ぜひ目を向けて考えてもらえればと思います。
(民医連新聞 第1841号 2025年11月17日号)
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