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民医連新聞

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相談室日誌 連載595 複合的な課題抱えるケース行政や関係機関と連携不可欠(茨城)

 70代の男性Aさんは、30代の長男と2人暮らし。昨年9月ごろからADLが低下し、同年末には体動困難で救急搬送され、敗血症性ショックと診断。急性期病院に入院後、今年1月に当院へ転院しました。
 急性期病院のSWは、長男の理解力が低いこと、無低診の利用希望を情報提供。面談で無低診申請の準備や介護保険の新規申請を長男に依頼しましたが、手続きがすすまず、軽度の知的障害が判明。Aさんの年金は月11万円、長男の給与は7万円のため、無低診の利用はできませんでした。
 Aさんは、長男が一人で生活できているかを常に心配していました。自宅のライフラインは電気のみで、ガス・水道は事情により使えず、食事は購入品で済ませ、入浴は銭湯を利用。要介護認定後も保険証の確認が取れず、自宅を訪問すると、郵便物は軒下に散乱。室内にはゴミ袋が1m以上積み上がり、尿臭も。自宅退院は難しい環境とわかりました。保険証は見当たらず、役所にいっしょに行き、再発行しました。
 入院後、Aさんの年金を長男が管理し、生活費に全額充てていました。急性期病院と当院の医療費は全額滞納し、借金や税の滞納も約300万円に上る状況でした。年金支給日前に食料が尽き、近所からの差し入れに頼っていることもわかり、長男による金銭管理は困難と判断しました。
 Aさんと長男に対し、年金を施設費用に充てる必要性や、第三者の金銭管理の導入、長男の就労支援や金銭管理支援の必要性を説明し、同意を得ました。複数部署に相談し、日常生活自立支援事業の申込をしましたが、後日長男は「年金がないと自分が生活できない」と利用を拒否。金銭管理の介入は困難と判断し、包括支援センターへ経済的虐待の疑い事例として報告。最終的に、成年後見制度の市長申立てと行政介入で、Aさんは特養へ入所。長男は基幹相談支援センターが介入予定となっています。
 高齢、知的障害、多重債務、金銭管理困難など複合的な課題を抱えるケースでは、行政や関係機関との連携が不可欠で、支援には時間と調整を要します。退院期限が迫るなかでも、必要な支援を受けられるために、病院で働くSWとして何ができるかをあらためて考える機会となりました。

(民医連新聞 第1842号 2025年12月1日・15日合併号)