基地による健康被害は明らか 辺野古新基地にNO!をつきつけよう 来年1月沖縄・名護市長選
来年1月25日の名護市長選挙は、沖縄と日本の平和に大きな影響のある選挙です。全日本民医連は、沖縄民医連の要請を受け、辺野古新基地建設に反対を表明している、翁長クミコさんの支援を決定。翁長さんと、沖縄民医連会長の嘉陽真美さん(医師)に、この選挙をたたかう意味を聞きました。(松本宣行記者)
犠牲を強いるシステム
沖縄・名護市と宜野座村には、キャンプ・シュワブ(海兵隊駐屯地)がすでにあります。新基地建設の計画は、宜野湾市の普天間基地を移設するという名目です。
翁長さんは「駐屯地から基地への拡大は、規模がけた違い。沖縄は民間地でも軍用機が頭上を飛行し、平穏にくらすことはできない」と、名護の空を見上げます。
日本政府は辺野古移設が唯一の解決策であるという方針を堅持していますが、本土が沖縄に米軍基地を押し付けている格好で、中央政府による、犠牲を強いるシステムとも言えます。
翁長さんは「米軍機の爆音で子どもが眠れず、母親が産後うつになる。この現実を悪化させるのか。県民投票で民意はしめされている」と憤りをかくしません。
沖縄をふくむ南西諸島での軍事化の進行に、翁長さんは「自衛隊は災害時に頼りにする存在だった。それがいま、政府の方針で、戦争に加担する方向になっている」と表情をくもらせます。
再編交付金に依存しない市政
米軍基地の再編交付金は、政府の意向に自治体を従わせるものですが、翁長さんはこれに頼らない市政をめざすと言います。
沖縄の課題のひとつ、若年妊娠は、妊婦の支援、産後ケアが求められます。しかし、名護市の分娩施設は2カ所。翁長さんは「自宅出産する人たちを支援し、安全と安心を確保したい。そのためには助産院などの整備が必要」と構想を語ります。生まれてきた子どもと親が名護でくらしやすいように、現市長が基地受け入れの見返りに、再編交付金ではじめた無償化(子ども医療費・学校給食・保育料)を一般財源で実現したいと力を込めます。これらは稲嶺進さん(元名護市長)の時代に、一部は一般財源で実現し、再編交付金がなくてもできることです。また、地域で子育てをすすめるために「ゆいまーる(助け合い)」を大切にしたいと語ります。名護市は基幹病院の統廃合がねらわれており、福祉の拡充が必要です。「名護にはケアワーカーが必要。ケアワーカーの処遇を改善し、住民が介護離職せず、働き続けられるまちづくりをすすめる」と訴えます。翁長さんは「全国のいのちをまもるケアワーカーのみなさんの力を貸してほしい」と結びました。
基地への依存度が加速
嘉陽さんは「現市政は基地の交付金に頼っていて、一見よくなっているように見えるかもしれないが、基地への依存度が高くなっている」と警鐘を鳴らしました。
軍用機が発する爆音のもとでくらす人たちは、睡眠障害、頭痛、耳鳴り、圧迫感で苦しんでいます。嘉陽さんは「低出生体重児の出生率も、関係が判明している。基地による健康被害は明らか」と。
沖縄は移住先として人気がありますが、嘉陽さんは医師として懸念していることがあります。「移住者で子育て中の人たちには地域社会とのかかわりがない人もいる。自治体による産後ケアの差をなくし、より充実したケアを実現してほしい」と期待を語りました。
平和のために全国から沖縄へ
嘉陽さんの祖父母は米軍が最初に上陸した慶留間島でくらしていました。叔父と曾祖母が集団死しています。「曾祖母が私の母に手をかけていたら、私は生まれていない。祖父も集団死を経験し、誰にも打ち明けずに亡くなり、孫の私は残された手記で地獄を知った。戦争は自分事としてとらえている」と言葉を絞り出します。嘉陽さんは「沖縄民医連の職員は一人ひとり、知っている戦争体験がある」と静かに訴えます。
全国の民医連職員へのメッセージとして「沖縄の平和のために、辺野古の新基地建設反対を明言している翁長クミコさんを支援してほしい。地元市長が反対となれば、大きな民意の表明になる。全国から名護に結集してほしい」と呼びかけました。
(民医連新聞 第1842号 2025年12月1日・15日合併号)
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