診察室から 19番目じゃないぞ!
私は医療系ドラマをほとんど観ません。突っ込まずにはいられませんし、フィクションとして楽しめないのです。そんな私でも、総合診療医(本当は家庭医)を二十数年やってきてドラマ『19番目のカルテ』をまったく観ないのも食わず嫌いが過ぎると思い、遅ればせながらサブスクでイッキ見しました。
未視聴の読者のために補足すると、『19番目のカルテ』は、19番目の専門領域として2018年から専門研修を開始した、総合診療医を主な題材としています。原作は富士屋カツヒトさんの漫画『19番目のカルテ 徳重晃の問診』ですが、松本潤さん主演で2025年7~9月にTVドラマ化されました。ネタバレ配慮のため内容には直接触れませんが、読みすすめる際はご注意ください。
私は原作未読勢ですが、総合診療のエッセンスが予想以上にちりばめられていて驚きました。映像の説得力はやはり素晴らしく、総合診療について知りたいという人には、「『19番目のカルテ』を観てください」とお勧めすれば良さそうです。総合診療的なターム(専門用語)としてゲートキーパー、家庭医療学、疾患と病い、BPS(生物心理社会)アプローチ。その他にもセカンドオピニオン、移行ケア(とヤングケアラー)、終末期在宅医療、医療従事者自身のケアも取り上げていましたし、生活史の聴取や家族志向のケア、地域へのアプローチを行う場面もありました。
印象に残ったシーンはたくさんありましたが、ひとつだけ、診断に悩む若い総合診療医に対して「病名をつけようとしなくていい。苦しみはもうそこにある」とベテラン総合診療医が諭すシーンをあげておきます。診断は目的ではなく手段であること、癒やすことの大切さが、短いセリフの中に表れていました。
総合診療(家庭医療)がめざしている医療のカタチは、地域に根ざして人をまるっとずっと診るという、一番の基本・原点です。専門領域として認められたのは19番目であっても、志は1番です。
(喜瀬守人、神奈川・久地診療所)
(民医連新聞 第1843号 2026年1月5日号)
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