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民医連新聞

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いのちをささえて2年 最後のひとりまで生活再建を

 能登半島地震から2年、豪雨災害から1年4カ月。被災者は応急仮設住宅(以下、仮設)7168戸や、金沢市内などの賃貸型「みなし仮設」(4000戸以上)へ入居しましたが、生きがいや地域のつながりを失っています。さらに被災者に対し、医療・介護の一部負担金免除打ち切りが追い打ちをかけています。大災害時代のいま、他人事ではない被災地の現状を取材しました。(松本宣行記者)

各地の震災経験が生かされないまま

 石川県健康友の会連合会(以下、友の会)奥能登ブロックの佐渡麗子さんは「輪島の奥まった地域では、震災と豪雨の被害がそのまま」と指摘します。
 地震発生直後の避難所は、トイレが使えず、避難所は避難者の排泄物で周辺まで汚染され、感染症がひろがりました。これまでの震災の教訓が生かされていません。佐渡さんは災害時の排泄は喫緊の課題と警鐘を鳴らします。
 被災者が入居した仮設は居間兼寝室が四畳半で、2人入居が基本です。輪島市は約700戸の災害公営住宅整備を予定していますが、被災者はすでに孤立しており、公募による入居は、さらに孤立を深めるおそれがあります。

生活基盤を喪失寄り添うことしかできない

 奥能登の高齢者の主な収入源は年金ですが、生きがいだった農業と人とのつながりは、避難で失いました。生産していた食料を買うようになり、被災者の支出は増大しています。
 佐渡さんによると、高齢者は医療費をねん出するために、食費を削っており、仮設では「早(はよ)う死んでもいいんやけど」という声が多く聞かれ、佐渡さんは「ただ寄り添うことしかできない」と、その苦しい胸の内を明かしました。

行政の主体性欠如受診控え42%

 石川県は、医療・介護の一部負担金の免除を昨年6月で終了。隣県の福井・富山が継続するなか、石川が真っ先に終了したことに、石川民医連事務局の藤牧圭介さん(事務)は「被災者は見捨てられた思い」と憤りを隠しません。石川民医連には「生活、住む場所も見通しが立っていない。通院はいのちにかかわること、せめて医療費免除は続けてほしい」という声が届いています。
 国や石川県は、石川民医連の一部負担金の免除復活の要請に「免除の是非は市町の判断。市町から要望がない」と回答。市町側は「国や県からの財源の保障がなく、継続できない」と回答しました。
 藤牧さんは「行政の主体性が欠如している」と指摘します。国や県は被災自治体を財政面で支援せず、自治体が市民から「悪者あつかい」される構図です。
 石川県社会保障推進協議会は、昨年9月に一部負担金免除の復活を求める署名を開始。石川民医連も全面協力しました。藤牧さんは「署名一筆ごとがはげみになる。さらに全国の仲間の力を貸してほしい」と訴えます。
 昨年11月5日、石川県保険医協会は記者会見で、受診控え781件(42%。複数回答含む)を明らかに。石川民医連が実施したアンケートでも、慢性疾患の患者が、食費を切りつめるなど具体的な影響を把握しています。藤牧さんは「被災者の支出増大と不安が、受診控え、介護の利用控えにつながっている」と分析しました。

声なき声をひろい人をつなぐとりくみ

 東海・北陸地協は、昨年11月24日~12月7日にかけて、仮設全戸を対象に訪問行動を実施。藤牧さんは「署名はほぼすべての被災者が協力してくれた」と運動への確信を深めました。「署名を通じて被災者が『声をあげてもいいんだ』という環境をつくれれば」と藤牧さんは語ります。集めた声をもとに今春の県知事選挙で要求運動を展開し「ひとり残らず生活再建ができるまで支援するよう求める」と決意をのべました。
 被災者をささえるとりくみは金沢市内でも。友の会西ブロックは、上荒屋クリニックで「能登からの避難者集まれ」を19回開催してきました。同クリニックの浅沼和敬さん(SW・公認心理士)は、「参加者は発災から1年くらい泣いていたが、2年目から笑顔が見られるようになった」とふり返ります。参加者の花尾則子さんは「市内の避難者の知人が増えた」と語り、通所介護ゆらりでボランティアを担うなど、新たなつながりが生まれていました。
 藤牧さんは「平時の医療・介護行政のあり方と災害対応を、人権の視点でチェックし続ける必要がある」と結びました。

(民医連新聞 第1843号 2026年1月5日号)