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民医連新聞

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副作用モニター情報〈651〉セフメタゾールによる凝固障害

症例)80代後半女性
開始日:尿路感染症に対しセフメタゾール(CMZ)3g/日開始。絶食・輸液管理下、プロトロンビン時間(PT)14.6秒、プロトロンビン時間‐国際標準比(PT‐INR)1.32。
開始3日後:PT49.1秒、PT‐INR4.65まで著明に延長。CMZ起因のビタミンK欠乏に伴う凝固障害を疑い、CMZ中止、ビタミンK20mg静注、セファゾリン3g/日に切り替え。
中止1日後:PT13.5秒、PT‐INR1.21へ速やかに改善。
中止5日後:PT12.5秒、PT‐INR1.12とほぼ正常化。出血なく、その後は安定。

 CMZによる凝固障害は、N‐メチルチオテトラゾール(NMTT)側鎖を有するセフェム系抗菌薬に典型的にみられる有害事象であり、同様の構造をもつセフォペラゾンなどでも報告されています。
 NMTT基は、抗凝固薬ワルファリンと同様に肝臓のビタミンKエポキシド還元酵素(VKOR)を阻害し、ビタミンK依存性凝固因子(2、7、9、X)の産生を低下させると考えられています。その結果、PIVKAの増加やPT延長/INR上昇をきたします。さらに抗菌作用による腸内細菌由来のビタミンK産生低下も関与し、二重の機序によりビタミンK欠乏が助長されます。
 発現時期は投与開始数日から約1週間に多くみられ(中央値約6日)、無症候の検査値異常から歯肉出血・皮下出血・消化管出血など多彩な臨床像を呈します。
 栄養不良や絶食・TPN管理下などでビタミンK貯蔵が乏しい患者、肝機能障害・腎機能障害患者、高齢者は高リスク群で、ワルファリン併用時により一層の注意が必要となります。
 異常を認めた場合は、速やかにCMZを中止しビタミンKを投与します。重篤な出血を伴う場合には凝固因子補充も考慮します。
 高リスク患者への投与時は、凝固能(PT/INR)のモニタリングを徹底し、必要に応じてNMTT非含有薬への切り替えや予防的ビタミンK投与の是非を個別に検討しましょう。

(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

副作用モニター情報履歴一覧

(民医連新聞 第1844号 2026年1月19日号)