診察室から コロナパンデミック後の心身的ストレスと歯科疾患
2020年から猛威を振るったコロナパンデミックから5年。現在はコロナという感染症を受け入れ、共生しなくてはいけない社会となりました。コロナ禍は生活を一変させ、職員の職場環境も変容。マスクやフェイスガードの着用、感染対策の徹底など、激しい変化で、職員への負担は計り知れないものがありました。
コロナ禍の前後で、ある特定の疾患が増加傾向にあることを実感しています。それは歯ぎしりや食いしばりに代表される顎(がく)関節関連の症状(ブラキシズム)です。これらの症状はストレスを無意識のうちに発散、処理しようとする生理的な反応として生じます。統計的な裏付けとなる明確な論文はまだ少ないですが、体感としてコロナ禍以降、顎関節症やそれに関連する症状を訴える患者の増加を感じています。このような口腔内の変化はパンデミックがもたらした生活様式の変化が、ストレスとブラキシズムに複雑に関係していると思われます。また、マスク常時着用は耳への負担を増やし、顎関節症への間接的な原因になることもあります。ブラキシズムだけでなく、口呼吸の増加で口腔内の乾燥による、自浄作用の低下や、リモートワークの普及による食事時間の不規則な変化や「だらだら食べ飲み」「つまみ食い」の増加は、口腔内のう蝕や歯周疾患の悪化のリスクを高めています。
口腔内の不調は患者だけの問題ではなく、職員もパンデミックによる、最前線のプレッシャーを強く受けています。近年の国際的な研究論文の多くが「パンデミックが医療従事者のメンタルヘルスと身体的健康に深刻な影響を与えた」と報告しており、口腔内の環境も例外ではないと思います。
職員一人ひとりが自身の口腔内環境をストレスのサインとして捉え、自発的なケアを行うことが大切です。また、職場でもストレスを抱え込まない環境をつくり、職員の健康を守る必要があります。自身の健康を守ることが患者の安全と最良のケアにつながっていくのだと強く感じます。
(牧野晋治、福井・たけふ生協歯科診療所)
(民医連新聞 第1844号 2026年1月19日号)
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