• メールロゴ
  • Xロゴ
  • フェイスブックロゴ
  • YouTube
  • TikTok

民医連新聞

民医連新聞

比例削減で民意歪曲の危険 多様な意見反映する選挙制度こそ

こたえる人 自由法曹団 常任幹事 田中 隆さん

 衆議院議員の比例定数削減案が継続審議になりました。議員定数削減の根本問題を弁護士の田中隆さんが解説します。

■異様な定数削減法案

 2025年12月5日、政権与党の自民・維新両党は、「衆議院議員の定数削減等に関する法律案」を提出しました。
 1割を目標とする定数の削減と選挙制度改革などを、議長のもとの選挙制度協議会で検討するとしながら、施行の日から1年以内に結論が出なかった場合には、小選挙区で25議席、比例代表で20議席を自動的に削減する法案です。
 与党が勝手に決めた「1割」の削減を押しつけ、国民的な議論によって慎重に行われるべき選挙制度の検討に、「1年」という期限を切ろうとするものです。
 法案は政治改革特別委員会に付託されましたが、すべての野党の反対で審議入りはできず、「継続審議」の扱いになりました。あまりに乱暴な法案への野党の反対は当然ですが、否決されなかったため、2026年通常国会に持ちこされることになるでしょう。

■連立合意で問題のスリカエ

 経緯や背景も異常でした。
 2025年10月20日に自民・維新両党が取り交わした連立政権合意の「政治改革」のなかに、「1割削減と臨時国会への法案提出」が組み込まれたのが発端でした。
 それまで維新は、企業・団体献金の禁止を主張し、立憲民主などとともに禁止法案を提出していました。その維新が、自民にすりよって禁止を引き下げるかわりに押し込んだのが定数削減でした。
 急浮上した定数削減の政治的本質は、自民・維新が政権の座につくための、政治とカネの問題の隠ぺい、スリカエ以外のなにものでもありません。

■国際的に多くない議員数

 国会議員の定数は、国際的にみても決して多いわけではなく、G7で人口あたりの議員数が日本より少ないのは、連邦国家の実質をもっている米国だけです。
 2016年1月、議長の諮問を受けて定数問題などを調査した「衆議院選挙制度に関する調査会」の答申が、「現行の衆議院議員の定数は、国際比較や過去の経緯などからすると多いと言えず、これを削減する積極的な理由や理論的根拠は見出し難い」としていることも、このことを裏付けています。
 「全国民の代表」(憲法43条)である議員は、主権者の国民の要求を国政に反映させるための存在であり、議員定数を削減することは民意が反映する道筋を細くすることを意味しています。

■多様性に逆行“政治ばなれ”

 維新は当初、「比例定数50削減」を主張していました。自民などの小選挙区議員の反発によって、比例代表だけの削減が強行される可能性も否定できません。
 比例削減が強行されれば、民意を歪曲して大政党しか議席を獲得できない小選挙区の比重が高まり、小政党ほど議席減少率が高まります(シミュレーション参照)。
 答申が出された2016年に比べても、民意はますます多様になり、さまざまな政党が生まれています。そのもとでの比例削減は、多様化する民意の反映を妨げ、「政治ばなれ」をますます拡大します。

■抜本的な解決の道へ

 小選挙区制を導入した政治改革の強行から30年をへて、政治資金が大きな問題となり、選挙制度の検討も課題になっています。
 政治資金の面でいま求められているのは、企業・団体献金の禁止で政治とカネの問題を解決することであり、政党助成金の廃止を含めた政治資金のあり方の抜本的な検討を行うことです。
 選挙制度の面では、民意を歪曲する小選挙区制を廃止し、多様な民意をそのとおり議席に反映する比例代表制や大選挙区制などの実現をはかることです。
 定数削減を許さず、あるべき政治と選挙制度を実現する声を大きくしていく必要があります。

(民医連新聞 第1844号 2026年1月19日号)