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民医連新聞

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医学対活動は大ピンチ 医学生と学び合い対話を重ねる活動を

全日本民医連医師委員長・医学生委員長合同会議

 昨年12月12~13日、群馬県で医師委員長・医学生委員長合同会議を17年ぶりに開催しました。医学対活動がかつてない困難に直面するなか、今日的な「医学対」のあり方について、全国から集まった参加者が活発な意見交換を行いました。(松本宣行記者)

あらがうべきことに声をあげよう

 全日本民医連副会長・医師部長の山田秀樹さん(医師)が問題提起を行いました。軍事費増と社会保障費削減に前のめりの自民・維新政権がすすめるOTC類似薬の保険除外、病床削減、窓口負担増などに対し、「あらがうべきことに声をあげることが、医師の社会的責任だ」と訴えました。また、政府が医師偏在のみを強調し、医学部定員削減に舵を切ろうとしているなか、国会の衆議院厚生労働委員会に、参考人として呼ばれた経験を報告。「地域や診療科の偏在対策は必要だが、医師の絶対数の不足の解消にとりくまなければ、根本的な対策とはならない」と、医師需給推計の見直しを強く求めました。
 民医連と医師・医学生署名をすすめる会は2023年12月から、医師不足の解消をめざす署名運動をすすめ、各地でシンポジウムを開催し、世論に訴えました。昨年の春には国会に署名を提出し、3党1会派30人の国会議員が紹介議員になりました。
 署名運動のなかで作成したパンフレット「80/80まやかしの『医師偏在』~医師不足の解消を~」は、医学生との対話から生まれました。「過労死水準の月80時間の時間外労働」と「引退の前提が80歳」で医師が余るとする政府に対して、絶対的な医師不足があることを告発しています。
 しかし、財務省医師需給分科会は医師需給推計をもとに、将来的に医師は余るとし、医学部定員を削減しない場合は国試合格率を下げ、医師の供給をコントロールすることなどを主張しています。一方、知事会などは医師不足に悲鳴をあげており、山田さんは「自治体へ『医師を減らすな』の声を届けてほしい」と呼びかけました。

奨学生増やし育ち合うことが医学対の本流

 2018年に217人だった医学生担当者は、2023年に178人へと減少しています。コロナ禍をへたマッチングは、2022年の188人から155人と落ち込み、新卒医師の入職が減少傾向にあるなか、この危機を打開する鍵は奨学生にあります。山田さんは、後期研修の継続率が非奨学生約3割に比べ、奨学生は約7割と高い事実をしめし、「奨学生を増やし育ち合うことこそ医学対の本流」と強調しました。そのうえで山田さんは医学対活動の困難の要因として、コロナ禍による体制弱体化、マッチング定数の削減や地域枠の増加といった構造変化、さらに経営難のなかで長期的視点が持ちにくくなっている現状を指摘しました。「医学対は民医連経営の中心的課題。医師集団が主体的にかかわれるよう、業務保障などの体制づくりが必要だ」とのべます。

医師の人権を守る真の働き方改革を

 2024年4月から始まった「医師の働き方改革」は、医師の残業時間の上限を年960時間と定めました。月平均で80時間の残業ですが、80時間内をめざすと2万人、所定労働時間をめざすと9万人の医師が不足するといわれており、現状の医師数で医療体制は維持できません。
 そのため働き方改革で見かけ上の労働時間を削るために、名ばかりの宿日直許可、時間外労働の自己研鑽化など様ざまな矛盾が生まれています。医師の確保と定着のためには、「労働基準法対応」の枠にとどまらない、医師の人権を守る「真の働き方改革」をめざして、たたかいと対応をすすめることが必要です。
 山田さんは、医療の維持を医師の自己犠牲に依存してきた構造を打破すべきだと強調。「なんのために、誰のためにを問い直し、ケアの倫理を私たちの働き方に落とし込もう」と呼びかけました。
 最後に、「医学対」をこれまでの「医学生対策」という認識から、「医学生と学び合い、対話を重ねる」活動へと進化させる必要性と活発な議論を呼びかけました。

今日的な医学対活動へブラッシュアップを

 つづいて、全日本民医連医学生委員会から、「ケアの倫理と人権の視点の医師養成時代における医学対活動方針案」を、副委員長の吉岡モモさん(医師)が提案しました。

過去の経験の蓄積が途切れる可能性

 これからの民医連の幹部を担う「事務幹部養成アカデミア」の受講生の多くが、医学対活動を経験していないことがわかりました。吉岡さんは第46期第3回評議員会の発言「未曾有の経営危機のなかで、学生対策がおろそかになると、今まで以上に経験の蓄積が途切れて、さらなる困難をもたらすことにならないだろうか」を紹介。医学対活動のふたつの柱「医学生の民主的成長と運動の発展を促す(医学生運動との協力共同)」「民医連運動の後継者を確保する」の実践をひき継ぎ、今日的方針を議論したいと問題提起しました。

「民主的成長」という言葉が伝わらない

 吉岡さんは「医学対活動は大ピンチ」と切り出しました。医学生を対策するという考えも今日的ではありません。医学対活動の柱で記されている「民主的成長」という言葉も伝わりづらくなっています。
 「私たちが医学生だった時代と現在は状況が変化している。短期間で大量の知識を詰め込み、睡眠時間が削られている。アルバイトなどもあり、医学生は民医連の奨学生活動になかなか時間がさけない」と吉岡さんは指摘します。タイパ、コスパという言葉に象徴されるように、短時間で結果を出したい、効率重視の風潮もあります。一方で、「公平、公正、平和に敏感な学生もいる」と希望を語ります。

全国で医学対活動の議論を

 2007年に7625人だった医学部定員は、2008年から増員に転じ、2024年には9403人となりました。医学対活動はすべての医学生が対象のとりくみです。定員増の一方で地域枠による制約がひろがり、卒業後の従事要件に民医連事業所が入らないなどの理由から、奨学生になれないといった実態があります。すべての医学生を対象に、民医連との出会いの場を提供し、関係性に応じて、制度を柔軟に運用していくことが求められます。
 奨学生は2019年に500人を超えましたが、以降は減少し、2025年10月現在、340人台にとどまっています。
 このような状況を受けて医学生委員会は今日的に考える「民主的成長」と、医学対活動で大切にしたい視点を3点提起しました。
 吉岡さんは会議にとどまらず、全国的な議論のスタート地点にしてほしいと結びました。

グッドプラクティス学び議論を繰り返す

 会議では、各県連のグッドプラクティスとして、「医師をめざす高校生の医療体験」(北海道)、「後継者対策を共同組織とともに」(千葉)、「全医師面談プロジェクト(コケコ宣言)のご紹介」(新潟)、「長期計画と医師政策をリンクさせての同時改定」(大阪)、「専攻医は、私たちの『宝』」(福岡・佐賀)などの報告があり、各地の活動を学び交流しました。
 ふたつの提起を受け、分散会と全体会議を重ねました。各分散会からは「医学対は医師と幹部が理解すべき」「事務職員が減少するなか、多職種で医学対を担ってもよい。リハ職員なら医学生を訪問リハにつれていける」「手を打たなければ、病院がつぶれてしまう。ふみこんだメッセージが必要」「大事なのは、自己犠牲的医学対活動からの転換を」など、活発な意見が交換されました。
 参加者からは「医学対はピンチで分水嶺。その認識を全職員の共通にして、全職員でとりくまないといけない」(香川・医師)といった感想が寄せられています。

 

医学対活動で大切にしたい視点

①民医連との出会いの場をつくる
 すべての医学生を対象とし、ひとりでも多くの医学生が民医連・社会と出会う場(民医連医療・介護の現場、当事者との出会いの場、価値観を交流する場)を全職員・共同組織とつくる。

②医学生運動との協力共同
 より良い医療の実現を求める医学生の主体的な学びをささえ、医学生運動に多くの医学生が合流できるよう促すとともに、医学生運動を牽引する医学生の成長を援助する。医学生が民主的に成長することと医学生運動の発展のために協力共同する。

③奨学生をはじめ民医連運動を担う後継者の確保と育成
 民医連とつながる医学生との学び合いと対話を通し、医学生とともに育ちあうなかで、民医連への理解と共感を深め「民医連の未来をともにつくるパートナー」である奨学生の確保と育成をすすめる。また、県連レベル・全国レベルでの仲間づくりを行う。そのことを通じて奨学生活動で成長した医学生100人を新卒医師として迎え入れる。

(民医連新聞 第1844号 2026年1月19日号)