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民医連新聞

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相談室日誌 連載596 高齢者の孤独な心境知るエンディングノート

 Aさんは90代女性、高校卒業後、一人で上京、飲食業を中心に働いて、75歳で仕事を引退。無年金のため、蓄えた貯金を切り崩し生活してきました。結婚歴はなく、親兄弟はすでに他界、親族とは誰とも連絡をとっていませんでした。
 今回は膝の手術のリハビリのため、当院に転院。入院時に「窓口」を聞くと、近所の友人の名前を伝えました。
 当院職員が友人に連絡をしたところ、友人は「聞いてない。自分も要介護でそちらには行けない」と窓口を辞退。Aさんは「窓口がいないと入院できないと思って、とっさに友人の名前を伝えたけど、実際は対応してもらえないってわかってたの。迷惑かけちゃったわね」と不安も混じったような表情で言いました。
 今後のことを考え、地域包括支援センターの職員とカンファレンスを行いました。担当医は、現段階でAさんの判断力はおおむね正常と診断しました。介護サービスの他に任意後見制度や生活支援サービスなどを利用して在宅復帰をめざすことになりました。蓄えへの不安もあったので、今後自宅マンションのリースバックも相談することになり、やっとAさんにも笑顔が戻りました。
 また、Aさんにエンディングノートの記入を提案。当初はノートを埋めるやりとりでしたが、次第にAさんの大切な人生に触れ、その孤独も感じました。友人に窓口を辞退されてしまったあの日の気持ちも、少しずつ話してくれました。「入院して自分の体のことや、いろんな手続きやお金のことが不安に思えてきたの。そんな時に誰も頼れる人がいないのは孤独で悲しかった。でも包括も来てくれて、頼める制度があるってわかったから少し安心した」と。
 昨今、身寄りがない高齢者の事例が増加しています。記憶力や判断力が著しく低下した人への支援が必要なことは当然ですが、一方で、判断力はあるのに、身寄りがいないというだけで普通に生活することに課題が出てくる人も増えています。ご本人がどう暮らしていきたいのかなど、意思決定支援に必要な課題を、行政や地域の支援者といっしょに考えながらすすめていければと思います。

(民医連新聞 第1844号 2026年1月19日号)

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