ケアがめぐる職場・社会へ 学習と対話を重ねよう
全日本民医連は昨年12月12~13日、東京都内で職員育成活動全国交流集会を開催。ケアの倫理caféのとりくみから生まれている変化を共有し「職員育成指針2021年版」を深めること、全国の職員育成活動を交流し、到達と課題を確認して第47期(2026年2月の総会から次期総会までの2年間)を展望することが目的です。(多田重正記者)
全日本民医連 職員育成活動全国交流集会
全日本民医連事務局次長の西村峰子さんが「職員をつなぎ、地域をつなぎ、ケアがめぐる社会へ学習と対話を重ねよう」と開会あいさつ。問題提起は、同副会長で職員育成部長の川上和美さん。46期のケアの倫理caféのとりくみは、職員同士が対話によってケアし合う場や、職場づくり、価値観を見つめる機会になったことなどを指摘。(1)caféを通じて生まれた声や変化を大切にし、7つの具体的指針(「職員育成指針2021年版」)を豊かに推進すること、(2)民医連の綱領と歴史、日本国憲法の学習を強めること、(3)国際的な人権保障の到達点を学ぶことを提起しました。
とりくみや悩みを交流
続いて山梨民医連による「ケアし合える職場・組織づくり」講座ワークショップを実施。県連教育委員長の深澤喜直さんが、県連の制度教育にケアの倫理を取り入れた過程などを紹介し、同県連事務局の河野朝呼さんの進行で、山梨で行っているワークショップのなかから「ケア労働はなぜやすいのか?」「ケアする人のケア」の2つのテーマで意見を出し合い、班ごとにまとめました。
その後、7県連が実践を指定報告。また、集会では三人一組で意見を交わすトリオセッションの他、班討論を行い、「経営が厳しいなかで、職員育成の課題が後回しにされる」との悩みや、「ジャンボリー活動に対する理解をひろげるにはどうすればよいか」など、活発な議論を交わしました。
全日本民医連職員健康管理委員会委員長で精神科医療委員会委員長の今村高暢さんは「健康でいきいきと働き続けられる職場づくりの視点から」と題して中間発言。医療・介護・福祉現場はストレスの高い職場で、精神疾患などの労災申請が増加していることを指摘。メンタルヘルス対応は、「職員を大切にする職場や組織風土づくりにおける眼目のひとつ」ととらえる重要性を強調しました。
閉会あいさつは、同副会長の山本一視さん。「経験や悩みも深いところで交流でき、学びになった。人が集まり、ぐんぐん発達する民医連へ。楽な道のりではないが、来期もとりくみを交流し、がんばりましょう」と笑顔で語りました。
指定報告から
ケアの倫理caféで思いを分かち合う 長野・NPO福寿草
NPO法人福寿草の山田さやかさん(介護福祉士)と小池歩美さん(介護福祉士)が、小規模多機能ケアはなももの、ケアの倫理caféのとりくみを紹介。
2020年からのコロナ禍で職場が疲弊していましたが、2023年から新しい職員を迎え、徐々に事業所の未来を描けるように。そこに提起されたのが全日本民医連のケアの倫理café。読んでも難しく、とまどいましたが、caféの紙面を事前に読み、感想交流の前にそれぞれの思いを出し合うことに。すると「みんなにケアされていると気づいて、あきらめず働いていこうと思えた」「利用者家族のケアも必要」「利用者から、ここに来ると生きる意欲がわくと言われた」など次つぎと思いが。これらのとりくみで、心理的安全性も高まっています。
職員育成で工夫 楽しいとりくみも 香川民医連
香川医療生協の吉原由美子さん(看護師)は高松平和病院を中心に、県連内の職場づくりを報告。ケアの倫理caféでは毎月、各職場の報告書で寄せられた質問に対する回答をニュースに掲載。2026年1月からは「ケアしあえる職場づくりcafé」を始めます。
職員研修にポイント制を設け、民医連や医療生協の活動でもポイントがもらえるように。年間一定のポイントを貯めると図書カードを贈呈。職員同士で感謝のメッセージを送り合う「Good jobカード」、新卒看護師の成長を喜びあうOKカードやメッセージの寄せ書きなども行い、喜ばれています。
吉原さんは高松平和病院の医局の職場づくりも紹介。院長のリーダーシップのもと、平和行進、地域医療を守る緊急署名、9条の碑の建立運動、民医連の理念学習などを推進。ハロウィンやクリスマス、専門医の合格祝いなど楽しいとりくみで団結力を高めています。
経営改善と職場づくり 福島・郡山医療生協
同生協の須田浩之さん(事務)は、健康な職場づくりに向けた、経営改善の実践を報告。超過勤務削減の旗振り役を須田さんが所属する総務部が担い、2024年度は前年度比較で超過勤務時間を約3600時間削減できました。
また、須田さんは総務部の職場づくりを報告。2023年から、月1回の部会の内容を報告中心から、協議や学習中心に変えて、開催頻度も週1回に。職場目標も全員でつくることを意識。実践状況をふり返る個人月報には、他の職員へ感謝の言葉などを送り合う「今月のひとこと」欄を設けました。「毎月言葉を送るので、一人ひとりに注目する頻度も増えた。ケアしケアされる、ケアの倫理の実践にもなっている」と須田さん。
全日本民医連の「育ち合いの職場づくりに必要な8つの視点」とKPT法(Keep…続けたいこと、Problem…問題点、Try…工夫したいこと)を用いた職場の自己評価(半年に1回)や、費用管理、労務統計上の気づきを交流し、経営を自分ごとにするようにとりくんでいます。
地域のなかでの職員育成と青年職員のピアサポート 熊本民医連
菊陽病院の小柳英理奈さん(看護師)が報告。同県連では2023年から「地域のなかでの職員育成」を目標に、制度教育でフィールドワークを重視した研修を実施。新入職員から全般管理者まで10の階層に分類し、水俣市内や、ハンセン病療養所の見学、ハンセン病市民学会への参加、水俣病患者の声を聞くフィールドワーク、熊本地震の災害公営住宅での生活実態聞き取り調査、くまもと地域自治体研究会との共催による熊本地震メモリアル集会など、さまざまなフィールド研修を取り入れています。
また、青年職員のピアサポート(同様の立場の人によるささえあい)を紹介。くわみず病院では、2024年度よりジャンボリー(JB)委員中心に、月に1度、1年目職員に対するピアサポートを開始。事前に質問用紙を配り、記入してもらって一人ずつ発表。悩みや話したいことがあれば聞き、必要があれば解決策をみんなで模索。ささえ、ささえられる関係につながっています。
平和塾とジャンボリー(JB)への支援 京都民医連
県連事務局の山路卓也さん(事務)が県連青年育成委員会による平和塾、JB活動への支援を報告。第15期平和塾は、39歳以下または勤続10年未満を対象に、2025年8月~2026年3月まで実施。講義を重ね、京都府北部の自衛隊舞鶴基地も見学し、「日本は本当に平和なのか」「なぜこんなに基地があるのか」など、受講生の学びに。
あわせて、JBへの支援も紹介。2022年に県連青年育成委員会と県連JB委員で懇談。「同世代と交流できていい」などの声の一方、「参加までのハードルが高い」「上司も参加したことがなく、職場で理解が得られにくい」などの悩みも出たため、県連拡大育成部会を2カ月に1回開き、JB委員長が参加することで、青年職員の実態やJB活動を知る機会に。JB活動の報告会の時間内保障を法人・事業所に呼びかけ、県連の入職式でもJBクイズの場を設けるなど、JB活動への理解・協力を得る努力を重ねていることも話しました。
アンケート結果をもとに職員育成交流集会を開催 千葉民医連
県連事務局の向淳さん(事務)が報告しました。同県連は全日本民医連「職員育成指針2021年版」の「育ち合いの職場づくりに必要な8つの視点」をもとに、職場の管理者・職責者がどう考えているか、アンケートを実施し、対象者318人中212人が回答。結果は、会議の定期開催や、患者・利用者の人権を守ることなどはおおむねできていましたが、職場の課題共有や学習は「できている」「できていない」で二分。アンケート結果を返すこと、職責者同士の悩みや実践の交流、職員育成指針の具体化などを目的に2025年2月、職員育成交流集会を開きました。
育成指針については「『日ごろの業務や職場のなかで』という位置づけは実践しやすい」「人が育つために何が必要なのか、あらためて考える場に」などの声が。経営困難から民医連運動や育成課題をすすめにくいとの困難も語られましたが、悩みながら育成にとりくむ職責者の姿が明らかとなり、おたがいが勇気づけられました。
法人職責者の次世代育成 岐阜勤労者医療協会
みどり病院事務長の中尾美絵さん(事務)が報告しました。人材確保と育成の課題を解決するため、「単に部課長候補を育成するのではなく、職責者全体の成長をめざした」と中尾さん。新病院建設運動(2024年開設)を契機に、2022年度、「コロナ禍だからこそ、地域に出て、病院への期待や意見を聞こう」と全職責と各部署から1人以上が出て地域訪問。事業所や職場の役割を再確認する機会になりました。
職責の自己研鑽ツールとして、民医連新聞や『いつでも元気』を位置づけ、投稿を推奨しています。
また毎年、部門別損益管理の予算づくりに際し、法人の予算大綱発表後、全部門の職責者が部署ごとに議論し、A4で1枚ほどの「予算作成にあたり」を作成。法人の予算大綱や民医連の方針の理解が不可欠。「ボトムアップ型の部門別損益管理は、職責が民主的管理運営を実践し、成長を自覚する上でなくてはならない」と中尾さん。「2021年度までは、民医連運動や活動、予算管理などについて、職責によって理解にばらつきがあったが、学習、交流、実践、評価するしくみを整えたことで、諸課題を具体的にすすめられる職責が増えてきたと思う」と話しました。
(民医連新聞 第1845号 2026年2月2日号)
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