相談室日誌 連載597 虐待ネグレクトの女性支援 経済的困窮に陥る若者たち
救急外来から「保険証がない患者が救急搬送されてきた」と連絡がありました。職場では保険証をつくれないとのこと。さっそく相談員が救急外来のベッドで点滴中の患者のところに行きました。本人の傍らには、10代の彼が疲れ果てて、ベッドに伏して寝ていました。本人はあどけない顔の20歳前の女性Aさんでした。
事情を聞くと、昨年夏に香川県より名古屋に出てきて、キャバクラで働いていると。昨日、強い酒をロックで飲まされ、その後自宅で嘔吐し、血液が混ざっていたので、自ら救急車を呼んだそうです。
Aさんは幼少期から両親から暴言や暴力を受け、食事も満足に与えられていなかったそうです。中学を卒業後に香川県でもキャバクラで働き、家を出るためのお金を貯め、名古屋に出てきたそうです。母親とはずっと話をしていない関係で、父親とはLINE連絡をしていましたが、LINEも無視されるようになったと。名古屋にいることは親には知られてしまったようですが、住所は知られていないとのことでした。
Aさんは家庭機能不全の状態で、さらに虐待ネグレクト状態で思春期を過ごしてきていました。本人は当初、生活保護を利用するといっていましたが、実際に保護課の説明を受けると「よくわからないし、面倒くさいからやめておく」と申請を断ってしまいました。結局1泊2日の入院費用は未収となりました。香川県からの転出方法をいっしょに市役所に電話し、郵送での手続きを支援。名古屋市に転入して保険証をつくることとしました。親の保険からの資格喪失証明など保険証をつくるまでの手続きができるのか心配です。保護係は「名古屋の繁華街には、転出せずに住んでいる若者がたくさんいて、珍しいことではない」と。多くいる若者のひとりとして扱われた感じを受け、虚しい思いを私は感じました。
今後について本人に聞くと「中学しか出てないから、キャバクラで働くしかない」と言っていました。幼少期からの逆境的小児期体験から自己肯定感がないと感じました。今後身体を壊したら、即経済的困窮に陥ると想像されます。近くに支援してくれる大人もおらず、今回の事例でAさんのような若者の今後が心配されます。
(民医連新聞 第1845号 2026年2月2日号)
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