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民医連新聞

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まちづくり推進リーダー養成研修 生きるに「併走」する地域コミュニティ

第2クールは埼玉 幸手モデル

 全日本民医連は、2025年から、まちづくり推進リーダー養成研修を開催。第3クールまで企画された本研修。これまでの参加者は32人。第2クールは石川・福島・埼玉でフィールドワーク。今後、大阪、福岡でも実施。今回、埼玉県幸手市で行われた第2クールは、全国から10人が参加しました。「医療機関と住民の共同したまちづくり」をテーマに、地域ケアシステム「幸手モデル」を学びました。(髙瀬佐之記者)

 幸手団地は、1986年に整備した総戸数3000戸を超える大規模団地。中心部には小学校、スーパー、郵便局、銀行ATMを併設し、幼稚園や保育所、総合病院が隣接しています。

支援に生活モデルの視点

 「ドラえもんと四次元ポケット、どちらがのび太を幸せにしていると思いますか」と参加者に問いかけるのは、南越谷内科クリニック院長の中野智紀さん(医師)。第11回赤ひげ功労賞の受賞歴を持ち、地域コミュニティ「菜のはな」の室長としても活動しています。
 昨今「2025年問題」として高齢化にともなう財源・サービス不足に対応するため、地域包括ケアがすすめられてきました。しかし、その目的や意味は十分に共有されていないのが現状です。中野さんは、介護保険制度の成り立ちや事例にふれながら「地域の施設に障がい者や高齢者を集めれば良いという話ではない」と強調し、「多くの専門家は、四次元ポケットの中身を磨くことばかり気にしている。磨くだけでなく、本人の生きづらさを探すプロセスも大事」と訴えます。
 誰もが入りやすい入口と、必要時に専門職にアクセスできる状況をつくることが地域包括ケアの根幹です。中野さんは地域コミュニティ「菜のはな」の活動を参加者に紹介します。しかし、地域主体でつくるものは、人口減少などの要因で崩れていくことも。中野さんは「崩れたものをどう直すかではなく、どうアップデートしていくか。崩れ、漏れてしまった人びとをどうささえるかが重要」と訴えます。また、「菜のはな」は、幸手市の医療介護推進事業の認定を受け活動しています。「問題が起きたときに、医師会や行政が介入する。地域のくらしをささえたいと考える若い専門職が心折れて帰るようなことを起こさせない」と話します。
 中野さんは「民医連の理念実現のために現場の支援が困難を極めることもあるだろう。全国に展開する民医連が、QOLを意識した医療を掲げていることに価値がある」と語ります。
 講演後のワークショップでは、「医療従事者として、支援を医学モデルに当てはめていたが、生活モデルの視点を持つ気付きになった」「今の共同組織の形も、アップデートしていきたい」など活発な意見交換をしました。

押し付けない介護予防

 幸手団地の中心部には、「コミュニケーション喫茶 元気スタンド・ぷりズム」の看板を掲げた喫茶店が。ここは、介護予防と地域コミュニケーション拠点づくりをめざす喫茶店です。
 創設者の小泉圭司さんは、企業勤めで転勤を重ねるなか、くらす地域に知り合いがいない将来像に不安を感じていました。団塊世代の大量退職が指摘された「2007年問題」を背景に、地域での孤立が病気や介護につながると考え、誰でも自然に集える喫茶店づくりに踏み出しました。リハビリ体操や指導は行わず、会話や外出そのものが元気につながる「押し付けない介護予防」を実践。売上額よりも、人と人がつながる場を守ることを大切にしてきました。
 元気スタンドでは、惣菜・弁当配達やレンタルセニアカーの「ぷライス」、子育て世代も集える「ぷれいス」も展開しています。
 千葉健生病院・健康友の会から参加した古澤裕子さん(事務局長)は「立地と設備が整っている。同じようにはできない」と肩を落としながらも「だからこそ、この研修を『学び』で終わらせず、参加者とつながり、共有し合いながら次の実践につなげたい」と意気込みを話します。
 社会やコミュニティが大きく揺れ動く時代。まちづくりをすすめる民医連の存在意義が、より鮮明になっています。

(民医連新聞 第1845号 2026年2月2日号)

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