副作用モニター情報〈653〉エンレスト錠による過度な血圧低下
症例)80歳代前半の女性。体重は不明。
高血圧症で治療中。人間ドックで収縮期血圧が170mmHgだったため医師が心配し、アムロジピン錠2.5mgからエンレスト錠100mgに変更。電話によるフォローアップで、「服用1日目、朝の血圧が115mmHgだった。効果が強く、ふらつきがあるので怖くなり、以降、エンレストを中止した。ふらつきは1日寝て治まった」との旨を聞き取った。
エンレスト錠は、体内でhANP(ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド)の分解を遅らせるサクビトリルと、血管を収縮させるアンギオテンシン2の作用を阻害し血圧を下げるARBの一種であるバルサルタン(100mg錠中50.15mg含有)に分解されて効果を発揮します。hANPは腎臓に働きかけて利尿を促進すると同時に末梢血管を拡張させる血圧降下物質として作用するため、2種類の降圧剤を組み合わせた薬といえるでしょう。また、バルサルタンの用量設定に目を向けると、小児に対する開始時の用量は体重35kg以上で40mgですから、エンレスト錠100mgにおいては「体重42kg以上」に置き換わります。
本症例は、アムロジピンの効果が残っている状態で新たに2種類の降圧剤を同時に追加したことになり、加えて、80歳を超える高齢者には、成人とはいえ100mg錠は過量だったかもしれないという複数の条件が重なり、急激な血圧低下が引き起こされたのでしょう。
エンレスト錠は薬価も高いので、降圧目的に使う場合は、安価なチアジド系利尿剤を追加して効果が不十分な場合に利尿剤とARBから切り替えるのが良いと考えます。添付文書には「過度な血圧低下のおそれ等があり、原則として本剤を高血圧治療の第1選択薬としないこと」「低用量から投与を開始(以下省略)」と記載されています。なお、2025年9月時点で50mgに高血圧症に対する適応は認められていないので注意が必要です。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1846号 2026年2月16日号)
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