フォーカス 私たちの実践 相談事例からみえる医療・介護の歪み―民医連の実践への確信/京都民医連あすかい病院
不条理を発信
人権守るSW実践
社会保障費を抑制する政策により、公的な医療・介護施策は多岐にわたる制約を課されています。その制約は様ざまな側面で「歪み」としてあらわれ、患者・家族に深刻な影響を与えています。その歪みの社会背景と、無差別・平等の医療と福祉の実現をめざす、民医連の実践の真価と、社会的存在意義の考察を、昨年の学術運動交流集会で、伊東慶祐さん(SW、京都民医連あすかい病院)が報告しました。
■退院支援を阻む4つの壁
SWは患者一人ひとりの人生の歩みを踏まえながら、本人の希望に沿った退院支援を行います。しかし、社会保障費抑制政策により、一般病院のSWにとって、診療報酬上の入院期限内での退院支援が至上命題であり、医療や介護が歪められている実態があります。
施設入所や転院のために、本来患者にとって必要な薬剤や治療内容・介護の中止や制限を迫られる事例、民医連外の少なくない病院が、差額ベッド料をなりふり構わず請求している事例があります。また、民間の介護施設や有料老人ホームの紹介業者が入居者確保を争い、SWに金品を提供して、紹介を依頼している実態がマスコミで報道されるなど、深刻な事態が生じています。
退院支援を阻む壁として4つの側面(表)に分類をしました。(1)医療的側面です。転院の際にDNARの確認を求められることや、低額な薬価に変更を求められることなどです。(2)介護的側面です。長期療養が必要な方の場合、介護度や医療依存度が高く経管栄養や寝たきりの方などは優先的に受け入れを検討しても、食事やトイレ介助を必要とする方は受けないという病院・施設があります。在宅に退院する際も、介護者・介護力の不足、介護保険の単位数不足など、介護サービスが利用できないことで、在宅退院がかなわないことがあります。(3)経済的側面では、無年金や低年金の方にとっては、施設費用や介護サービス費が高額であることを理由に入所やサービス利用をあきらめざるを得ない場合もあり、無料低額診療事業の利用者は他の医療機関への受診・転院が難しくなります。(4)社会的側面では、身寄りがない、保証人がいない人は入所も転院も断られてしまうことや、診療報酬上の在院日数が厳しくなり、十分な退院準備ができないこともあります。
厳しい経営環境のなかで、期限内に退院を調整しきることがSWの価値基準になる傾向があり、SWは複合的な壁が立ちはだかるなかで倫理観や人権感覚をすり減らし、苦悩しながら退院支援を行っています。
現在、医療機関の6割以上が赤字です。経営改善のため、室料差額の支払いを入院の条件にしたり、生活保護世帯に対しても室料差額を請求したりするなど、厚労省の通知を無視した事態が起こっています。

■いのちと尊厳が守られない
これまでのべてきたように、医療介護の公的責任が縮小された結果、患者・利用者のいのちと尊厳が軽視されている実態が様ざまな形であらわれてきています
このまま黙っていてはいけないと思い、4つのソーシャルアクションにとりくみました。(1)京都民医連SW部会として選挙の候補者へ公開質問状を提出し、回答を県連内で共有。(2)厚労省通知を無視した差額ベッド代請求の実態について、一般新聞の読者欄に投稿。(3)医療機関の維持と存続を求める署名への協力を、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターに呼びかけ。(4)高齢者住宅紹介業者の来院時、新聞報道に対する認識を確認し、紹介業者の実態の聞き取りを行いました。
無差別・平等の医療と福祉の実現、すべての人が等しく尊重される社会をめざすことを綱領として掲げている民医連の存在と真価が問われています。人の尊厳を守るためのケアには十分な社会保障が必要です。これからも私たちSWは人権感覚を奪われず、実践に基づく社会変革を促進する専門職であり続けたいと思います。
(民医連新聞 第1846号 2026年2月16日号)
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