• メールロゴ
  • Xロゴ
  • フェイスブックロゴ
  • YouTube
  • TikTok

民医連新聞

民医連新聞

1日目 運動方針案説明 岸本啓介 事務局長 平和と人権の危機に抗し大軍拡・改憲ストップへ連帯の力を

 2年前、私たちは沖縄で総会を開きました。平和憲法のもとへの復帰を求めたいのちがけの県民運動のなかで生まれた沖縄民医連の歴史と現在に触れ、民医連運動への確信を深めました。そして、憲法9条の地・沖縄から、憲法25条の地・岩手でふたたび集おう--そう誓い合って準備してきたのが、この総会です。
 岩手では、保険証を失った子どもの入院をきっかけに、共同組織とともに立ちあがり、県議会を動かして「中学生までの窓口負担無料化」を実現しました。さらに青年職員が無料低額診療のとりくみをひろげ、薬代補助制度を地域で実現するなど、いのちを守る実践が積み重ねられています。
 その根底には、旧沢内村の深沢晟雄村長に象徴される、いのちの平等を求める歴史があります。深沢村長は憲法の理念を力に、1960年、憲法25条を根拠に老人医療費無料化を断行しました。
 憲法を力に、いのちとケアを大切にする社会をめざす、その歩みを確かめ合う総会にしましょう。憲法公布80年の今年、この岩手の地から大きな議論をひろげていきましょう。

 昨日の理事会で、本日の理事会報告の内容について検討しました。今後2年間の私たちの方針に大きな影響を与えるであろう、2月8日投開票の衆議院選挙の結果について討議しました。あわせて県連の討議での特徴点も念頭に置きながら、具体的な点でも総会方針案の論点を報告します。

 総選挙の結果について方針案を補強します。
 総会方針自体は総選挙前に全県に送りました。第2章第1節(1)に、前々回の衆議院選挙、参議院選挙、この結果を全体としてどう見るかという記載があります。結果は、衆参両院とも自民党・公明党の政権は少数与党に転落となりました。自民党・公明党の政権は終焉し、新たな政権となった自民党と維新の会の連立政権の特徴として、戦争ができる国をめざし、社会保障削減をさらにすすめ、排外主義をあおっていることを特徴として指摘しました。これらを前提として、総選挙の結果をどのように見るのかを補強していきます。

 今回の総選挙は、16日間という極めて短期間で、しかも豪雪によって「投票の権利」が奪われるという、あってはならない事態が広範囲にひろがるなかで強行された異常なものでした。「国論を二分する」と掲げながら、主要政策の議論は回避され、党首討論も欠席。民主主義の根幹を揺るがす選挙でした。さらに、この突然の解散は、企業団体献金禁止や選択的夫婦別姓など、歴史的な議論がすすんでいた法案を廃案にしました。
 結果として自民党が衆議院で3分の2の議席を確保したことは、与党単独で、憲法改正を発議し、また参議院で否決した法案を衆議院で再可決・成立できる議席を持ったことになります。今後は安保3文書の改定や非核三原則の見直し、9条改憲といった、戦争できる国づくりが、過去にないスピードですすむ恐れがあります。私たちはこの選挙結果を、平和と人権に対する重大な危機として深く認識しなければなりません。

 高市総理が掲げる「責任ある積極財政」の正体は、大量の国債発行による軍事特定企業への投資に他なりません。国際法への視座を欠いたまま日米同盟の強化を優先し、中国を念頭に置いた「戦争の長期戦」という前提を掲げました。安保関連文書の前倒し改定や殺傷兵器の輸出解禁といった軍事化の加速は、平和国家の歩みを覆すものです。
 深刻なのは、改憲への執念です。選挙直後から早期の国会発議を煽る一方で、ジェンダー平等、多様性の尊重、ケアの充実、格差の解消など、私たちが大切にしてきた「いのちとくらし」をささえる言葉はありませんでした。

 そのことを全体の前提にしながら、2つの点について重点的に報告します。1つは医療費の大幅削減、もう1つは改憲です。
 第一に、消費税減税と医療費大幅削減の問題です。
 総理は食料品の消費税を2年間ゼロにする方針を打ち出し、「給付付き税額控除」導入までの負担軽減策であり、「責任ある積極財政」で過度な緊縮を断ち切るとのべています。
 国民生活の負担軽減のために消費税減税は必要です。食料品の消費税ゼロは年間約5兆円、2年で10兆円の減収とされていますが、消費税収の穴埋め財源が不明確なままでは、医療や社会保障の財源に長期間大きな穴が空き、いのちとくらしをささえる制度がさらに切り捨てられます。財源は社会保障削減ではなく、応能負担の原則にもとづき、大企業や富裕層への課税強化など公正な税制によって確保すべきです。
 現在設置されている国民会議では、税と社会保障の一体改革が議論されており、代替財源のない減税は社会保障削減と一体ですすめられる危険があります。
 さらに政府は、防衛費をGDP比2%へ前倒しで引き上げ、今後は3・5%や5%への拡大も検討しています。防衛費が増えれば、その分医療や社会保障への税の配分は減り、大幅な圧縮が避けられません。
 第二に、憲法の問題です。高市政権がすすめる「戦争する国づくり」は、社会保障抑制と一体で加速しており、そのもとで改憲の危険性を強く指摘する必要があります。一昨年、自民党憲法改正実現本部は、自衛隊明記を含む改憲案の準備をすすめました。内容は、現行憲法9条1項の「戦争放棄」と2項の「戦力不保持」を残したまま、新たに9条の2を設け、「必要な自衛の措置」を妨げないとしたうえで、そのための実力組織として自衛隊を明記し、内閣総理大臣を最高指揮監督者とするものです。
 この改憲には重大な問題があります。第一に、「必要な自衛の措置」の範囲が極めて曖昧であり、戦力不保持を定めた9条2項の制約が形骸化し、日本国憲法の基本原理である恒久平和主義が大きく揺らぐことになります。
 第二に、基本的人権と国民生活への影響です。自衛隊を憲法に明記することは、この実力組織を憲法上の国家機関として位置づけ、その任務や活動が「公共の福祉」を理由に正当化され、基本的人権の制限が強まる危険があります。さらに、「公共の福祉」を理由に防衛費の拡大が際限なくすすみ、その財源確保のために増税や社会保障の削減がすすめられることも懸念されます。
 自衛隊明記の改憲は、憲法の平和主義と人権保障のあり方を大きく変質させる問題です。その危険性をしっかり共有し、社会にひろく訴えていくことが重要です。
 方針案第3章のリード部分で47期の重点について4つ記載しています。
 私たちが培ってきた連帯の力は揺るぎません。「ミサイルよりケア」の信念のもと、コロナ禍や経営危機を乗り越えるようなたたかいをやっています。高額療養費の引き上げに対し、25万筆の署名がしめす国民的な怒りと共同をさらにひろげましょう。
 立憲民主党の一部議員との共闘姿勢に見られる通り、市民と野党が心を合わせる余地は残されています。平和・人権・社会保障を最優先課題とし、大軍拡と改憲をストップさせましょう。

 第3章は、2年間の概況と、第1~2章を踏まえての民医連運動全体の重点的なとりくみです。第3章については、より具体的な議論として分散会でも大いに議論をしてもらい、方針や課題を全国の経験から学び合いながら、充実させてください。
 2点報告します。1つは経営問題です。方針案第3章第5節はたたかいと対応の前進を一層強化しようという方針です。
 過去最多を更新し続ける医療介護事業所の倒産・経営危機に対し、私たちは「たたかいと対応」の両輪で民医連の未来を切りひらいてきました。この間の緊急行動と署名活動は、2月16日現在、82万6057筆が集まっています。地域の連帯と医療界の団結を促し、30年ぶりの診療報酬プラス改定になりましたが、現場の危機は依然として深刻です。民医連経営は重大な岐路に立っています。今後は、圧倒的な予算を社会保障に回すための国民運動をさらに発展させると同時に、私たちの事業経営そのものの構造転換を図っていきます。2040年を見据え、事業と運動を一体で前進させましょう。
 第3章全体が2040年にむけた私たちの事業活動、人材確保と育成、共同組織、総合的な民医連運動、事業と運動を一体で前進させようという呼びかけになっています。「たたかい」と「対応」を両輪に、構造転換をやり抜き、好循環をつくれるような方針を持てたという総会にするために、分散会での討議と実践の共有をお願いします。
 もう1つ、医学生分野は、46期第2回評議員会で、医学対活動はいま困難に直面していると提起しました。総会方針案の注45で、6点の課題を要因としてあげています。県連として、自己分析をすすめ「オール県連」・「オール民医連」にふさわしい、医学生と学び合い対話を重ねる活動へむかう議論もお願いします。

 総選挙後、国会の状況は過去にないきびしさを持ちました。新しい危機的なフェーズは、声をあげ、対話がひろがるチャンスです。私たちには連帯の力があります。これは民医連の強みであり、すばらしさです。地域で、職場で、対話をひろげ、地域に深く根を張って、平和と人権・健康権を取り戻す出発にする総会にしようではありませんか。理事会はその先頭に立つ決意です。
 知恵を寄せ合って、そのための47期の方針を練りあげていくことをお願いします。

(民医連新聞 第1848号 2026年3月23日号)