1日目 増田剛会長あいさつ 地域から平和と人権の大波を民医連全組織でいどむ2年に
記録的な大雪に加え、種々の疑惑に答えぬまま、雪国の苦労も受験生の苦悩もお構いなしの「自分勝手解散」総選挙が強行されるなか、総会準備にも多大なご苦労があったと推察いたします。
前総会以降、高柳新元会長、石川民医連中内義幸会長はじめ、69人の現役職員が亡くなりました。心からの敬意と感謝の気持ちを込め、第47回総会として黙とうを捧げたいと思います。
■ひっ迫する世界情勢
本年はアメリカ・トランプ政権によるベネズエラ大統領拉致という国際法に背く暴挙で幕を開けました。この間、民医連と友好的な関係を続けてきたキューバは、長く続くアメリカの経済封鎖に加えて、ベネズエラからの石油確保が途絶し、多くの社会インフラが大変な窮地に陥っています。トランプ氏はグリーンランド占有の野望を表明し、自ら拒否権を有する事実上の「終身議長」とする「平和評議会」を立ちあげ、国連に替わる組織にするかのような発言を行っています。
パレスチナ・ガザ地区は、2023年10月からの死者数が7万2000人を超え、ロシアによるウクライナ侵略戦争は、ウクライナの民間人死者数が1万5000人にのぼり、2万人以上の子どもが誘拐されたと報道されています。
これまで国連を中心に地道に築きあげてきた平和構築の国際的規範が今激しく脅かされています。総会運動方針にも記したように、「国連憲章がうたう諸原則を尊重した国際連帯こそが、世界平和を保証する確かな道であることを再確認し、日本が国際社会で役割を果たしていけるよう、政府に働き掛けて」行かねばなりません。
総会運動方針案第一章には、2020年代中間点に立った私たちが直面している情勢が、「新しいフェーズ」に入った危機的な事態として捉えることの重要性を記載しました。
日本ではアメリカの戦争に巻き込まれることが現実的懸念となっており、常軌を逸した大軍拡と失政によりかけがえのない国民皆保険制度の存続が危機に瀕しています。自己責任論の蔓延と併せて経済格差と生活苦を背景に、排外主義や「いのちの軽視」という感覚がひろがっているような現実があります。そして、医療・介護事業所がかつてない厳しい経営環境にさらされ、民医連事業所においても「変わらないと存続できない」状況に置かれています。これらはどれも「戦後、日本が何とか守り続けてきた、この国のありかたそのものが、瓦解する」深刻な事態だという課題認識が必要です。2020年代後半、私たちはその克服に挑まなければなりません。
■総選挙結果を見て
今回の総選挙結果もそうした視座でみることが必要です。
高市首相は、旧安倍派の裏金議員を党役職に復帰させ、2月20日の1万2000字を超える施政方針演説でもっぱら強調したのは「力」でした。そこには弱い立場に追いやられている人びとへの眼差しは実に乏しく、ジェンダー平等や多様性尊重などへの熱意は読み取れませんでした。ケアの倫理を深めてきた私たち民医連にとって、今、対極とも言える政権が目の前に現れたと感じます。
首相はさらに、国家情報局の設置や殺傷兵器の輸出へ本格的に道を開く方向性をしめし、最後には憲法改正の発議への期待をのべました。9条改憲を許さない国民的な運動を推進していくことが目下の最重点課題であるという認識が必要です。「ミサイルよりケアを」の運動を医療・介護・福祉の現場や各地域から大きくひろげていくことが、かつてなく重要になっているということを強調します。
世界を見渡せば、右派ポピュリズムの台頭などの動きに抗して、新たな左派・リベラルとも言える潮流が確実に育っています。アメリカ・ニューヨーク市長選では、民主社会主義者を自認するゾーラン・マムダニ氏が「富裕層に課税を」と訴えて当選しました。こうした事実は、個々の生活者のニーズを的確に捉え、適切に応えることができれば、人権と公正、包摂と多様性を重視する方向へ多くの人びとを結集し得ることを証明しています。
47期の民医連には、市民と立憲野党の共闘再構築にむけて、いっそう汗をかく決意が求められます。
■私たち民医連として
総会スローガンに方針全体を貫く私たちの構えをしめしました。
第1文では、46期のキーワードでもあった「非戦・人権・くらし」をひきつづき掲げ、「新しい危機的なフェーズ」の象徴的な内容としての国民皆保険制度の危機に立ちむかうことを強調しました。加えて、総選挙結果を踏まえれば、憲法公布80年への思いを握って離さず、9条改憲を阻止する決意もしめしています。
第2文には、2020年代に本格的に出会い、深めてきた「ケアの倫理」の視座をよりどころにして、運動を進化させていくことを表現しました。特に文末にある「社会と民医連」という文言に込めたのは、民医連自身が「公正でジェンダー平等と多様性が尊重される」組織になっているのかどうか、今も苦しんでいる仲間が身近にいるかも知れない、ということに想いをはせ、47期でのさらなる飛躍を期す意思をしめしました。全日本民医連のSOGIEコミュニティーが発信しているメッセージを一人でも多くの人たちに、ご覧になってもらいたいと思います。
第3文は、緊急に打開が求められる担い手の確保・育成に言及しました。そして、最重点である経営改善の主体として、医療・介護・福祉事業に携わるすべての職員と共同組織を「総合力」と表現しました。まさに民医連全組織の総力で難局を突破する47期にしなければなりません。
「非戦・人権・くらし」をかかげ、ケアの倫理の学びを深めた私たち民医連は、共同組織との協同の力で、地域から平和と人権の大波を起こす確かな力になることが期待されています。そのための大事な運動方針を練りあげるのが本総会です。
3日間、寒さを吹き飛ばすような熱い討議で、この盛岡総会を大成功させたい、そのことをお願いして、私からのあいさつとします。
(民医連新聞 第1848号 2026年3月23日号)
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