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民医連新聞

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SOGIE※の視点からだれもがかかりやすい外来へ 福岡・千代診療所

 福岡医療団の有志職員で構成する福岡SOGIE(ソジー)団は、LGBTQ+への配慮をきっかけに、千代診療所で外国人や高齢者など、すべての人にやさしい外来づくりをすすめています。とりくみを取材しました。
(松本宣行記者)

 福岡SOGIE団(以下、同団)は、法人のかかりやすい外来のとりくみのなかで、外国人支援チームとLGBTQ+支援チームに分かれました。「チームに名前をつけよう」と、たくさんの候補から選ばれました。
 同団の会議は自由闊達です。議論は既存のシステムにもおよびます。桑野史也さん(事務)が「外来で患者本人への性別確認をなくしたい」と話せば、西山洋子さん(事務)は「電話対応の接遇や、電子カルテの仕様変更も必要。間口をひろげ、選択肢を増やしておくことが大切」と、無料低額診療事業の視点も交えて実務的な課題を提示します。
 その視線は労働環境にもむけられ、2025年度入職者から職員番号の性別区分を廃止。ユニセックスの制服導入など、法人全体として、性別を前提としない姿勢を打ち出しています。
 吉本和代さん(看護師)は、救急外来でLGBTQ+の患者と出会い「最初は知らないことだらけ」とふりかえります。「知らないことで患者に嫌な思いをさせたくない」という桑野さんの思いや「ハンディキャップのある人がくらしにくい社会を改善したい」という松尾春菜さん(事務)の使命感が会議で共鳴していました。

困りごとにむき合う みんなにやさしくなる

 同診療所はこれまでに、(1)問診票の性別欄削除、(2)診察券の性別表記廃止、(3)「みんなのトイレ」の設置、(4)外来で患者をフルネームで呼ばず受付番号と名字で呼ぶようにしました。受付番号と名字の呼び出しは、外国人患者も理解しやすくなりました。
 象徴的なとりくみのひとつが、「みんなのトイレ」です。障害者用トイレの名称を変えるだけでなく、表示にはメンバーの思いがつまっています。西山さんは「きっかけはLGBTQ+だったけれど、認知症の人たちにもやさしい表示を求める意見があった」と教えてくれました。おむつ交換が可能であることをしめすなど、多様なニーズを持つ人が直感的に安心できる空間をめざしました。
 一方で、医療機関ならではの悩みも。既存のトイレ設備を改修して、検査室への検体受け渡しの窓をつくるには、100万円近い費用がかかる現実もあり、理想と予算の狭間での葛藤が続きます。

マジョリティが変われば現場の景色が変わる

 福岡市の外国人人口比率は2・5~3%と推計。同診療所の掲示物や説明は、多言語とやさしい日本語でつくっていました。外来患者の約6~7%、産婦人科に限れば約2割を外国人が占め、とりくみは外国人コミュニティに口コミでひろがっています。
 昨年6月に行った看護奨学生企画「梅のつぼみ」では、同団メンバーが講師を務め、物理的な距離による有利・不利を体験するアクティビティを通じ、看護学生に差別を体験してもらいました。「マジョリティ(社会的に優位な集団)が変わらないとマイノリティ(社会的に不利な集団)と対等なやりとりはできない」と西山さんは、社会構造に目をむける重要性を強調します。

受診の壁を壊したい ケアの倫理を指針に

 課題はまだ山積みです。隣接する千鳥橋病院の更衣室整備や、同性パートナーを家族同様に対応するための書類整備など、試行錯誤は続きます。
 「ウェブサイトを見直し、相談フォームをつくることで、受診の壁がなにかを教えてもらい、取り除いていきたい」と桑野さんは前を見据えます。
 西山さんは、46期に提起されたケアの倫理caféの学習を指針に、SOSを出せない人びとの存在を忘れてはならないと訴えます。全国の民医連の仲間へむけて西山さんは「当事者ではなくても、理解し、支援する意思を持つ人であってほしい。ともに学んでいきたい」と結びました。


※ 性的指向(Sexual Orientation)、性自認(Gender Identity)、性表現(Gender Expression)を組み合わせた言葉で、人間の性のあり方が多様であることを示す概念。

(民医連新聞 第1849号 2026年4月6日号)