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民医連新聞

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改憲・社会保障改悪ゆるさず ケアを大切にする社会と政治の実現を

 2月8日の総選挙で、衆議院では改憲派が9割の議席を占めました。社会保障もOTC類似薬(注)の自己負担増など、国民のいのち、健康、くらしを脅かす改悪が数多くねらわれています。民医連は何を大切にし、何を国に求めていくのか。全日本民医連事務局長の入江敬一さんに聞きました。(多田重正記者)

全日本民医連事務長 入江敬一さんに聞く

注 薬剤師、登録販売者が説明すれば「Over The Counter」=カウンター越しに販売できる医薬品がOTC薬。OTC類似薬は、保険適用となる医薬品のうち、OTC薬と同様の成分を持つ医薬品

衆議院議員の9割が改憲派

 自民党総裁で首相の高市早苗さんは、総選挙が終わったとたんに「国民に信任された」「改憲にむけた挑戦をすすめる」と言いました。高市さんは選挙中、改憲についてほとんど発言していませんでした。
 自民党は衆議院で316議席(68%)を獲得しました。とくに小選挙区では249議席(小選挙区の86・2%)を占めましたが、得票率は49・2%です。投票に行かなかった有権者を含めた「絶対得票率」では、小選挙区で26・9%にすぎず、国民に信任されたとは言えません。
 それでも、自民党単独で、改憲発議に必要な3分の2を衆議院で得てしまいました。一つの選挙区でひとりしか当選しない小選挙区制によるゆがみです。参政党、国民民主党、中道改革連合(公明党と立憲民主党が合流)の所属議員などもふくめて、衆議院議員の9割が改憲派という、危機的な状況に私たちはおかれています。
 自民党は2026年の方針として、衆参両院の憲法審査会に改憲の条文起草委員会をつくり、改憲草案の国会提出をめざすとしています。条文の起草委員会が発足すれば、改憲の動きがさらに加速することが考えられます。
 高市首相は、中国が台湾に武力行使すれば、自衛隊を出動させる日本の「存立危機事態」になると公言し、中国との軍事衝突の危険を高めています。台湾に中国が武力行使する「台湾有事」の際、日本はアメリカといっしょに軍事攻撃することを想定しています。
 「台湾有事」で戦争になれば、戦場になるのはアメリカではなく、日本です。多くの人が傷つき、いのちを落とすことになります。医療・介護は、なによりも人のいのちを大切にする仕事です。戦争はその対極にあるものです。
 しかも「台湾有事」は、日本の自衛とは何の関係もありません。いま日本政府がすべきことは、国同士の問題を武力で解決しないと決めた憲法9条を持つ国として、外交の場でも、話し合いで問題を解決する姿勢をつらぬくことだと思います。

国民皆保険制度の根幹に穴をあける改悪も

 軍事費倍増の方針のもとで、社会保障費がこれまで以上に削減・抑制の標的にされています。そのため、社会保障制度の根幹にかかわる大改悪が実施されようとしている点も看過できません。
 2025年2月、自民党、公明党(現・中道改革連合)、日本維新の会が、医療費の年間4兆円削減で合意しました。その一環としてねらわれたのが、OTC類似薬の保険はずしです。
 保険はずしは、医療界や患者団体の強い反対にあい、いったん断念に追い込まれました。かわりに出てきたのが、OTC類似薬の4分の3まで保険適用にし、残りの4分の1を自己負担にする案です。解熱鎮痛剤でおなじみのロキソプロフェンナトリウムなど77成分、約1100品目を対象にしています。2027年3月実施がねらわれています。
 1100品目のなかには、胃腸炎の薬やアレルギーの薬など、私たちが日常診療で使う薬が数多く含まれています。保険料を払っているのに、治療に必要な薬まで保険外負担が発生することになる。これは、国民皆保険制度の根幹に穴をあける重大な問題です。
 高額療養費制度の自己負担限度額引き上げも今年8月から実施されようとしています。がん患者などから「治療を続けられない」「子どもの教育費を考えたら、自分の治療をあきらめるかもしれない」などの悲痛な声が出ています。
 政府は「現役世代の保険料軽減」「負担の公平」などの理由をあげますが、軽減される一人あたりの健康保険料は、高額療養費の負担増でひと月120円、OTC類似薬の保険外負担でわずか30円です。しかも政府は、これらの改悪で生まれた財源を、少子化対策にあてると説明していますが、誰かのいのちを削って子育ての予算にすること自体、社会保障の理念に反しています。
 このほかにも、入院ベッド11万床削減、ケアプラン有料化、介護保険利用料2割の対象拡大など、数多くの社会保障改悪がねらわれています。

前進した診療報酬・介護報酬増額の運動

 一方で、46期(2024年2月~2026年2月)は、診療報酬や介護報酬の増額を求める運動が大きく前進したことを忘れてはいけません。診療報酬増額を求める運動では、日本病院会など6病院団体が合同で記者会見を行い、病院の6割以上が赤字で、診療報酬10%の増額を訴えました。民医連も全国で、事業所の経営とともに、地域住民の医療を受ける権利をまもりぬく課題と位置づけて「緊急行動提起」を行い、昨年6月から今年1月の半年あまりで、署名約82万6000筆を集めました。短期間のとりくみとしては近年にない署名数で、運動の成果もあり、2026年診療報酬改定で、本体部分3・09%の診療報酬アップが実現しました。
 介護報酬でも、訪問介護がのきなみマイナスになった(2024年報酬改定)ことを受け、民医連も民医連外の事業所にアンケートや署名を訴え、協力を呼びかけるなど奮闘しました。こちらも2027年の介護報酬再改定前にプラス2・03%の臨時改定(今年6月)が実現するという成果につながりました。
 しかし診療報酬は、長年抑制され、消費税も医療機関の持ち出しになっており、今日の物価高も考えると、3・09%ではとても足りません。しかも増額分の半分以上が賃上げだけに使うように限定されていることもあり、病院倒産の危機を解消するにはほど遠い。
 介護報酬も、介護従事者の賃金を月1万円、生産性向上や協働化にとりくむ事業者の介護職員を対象にさらに月7000円増額するとされていますが、それでも全産業平均から8万円以上低い賃金の改善にはまだ足りません。
 医療も介護も、公定価格である報酬制度で事業所の収入が決まります。税金を軍拡に注ぎ込むのではなく、社会保障に使うように、国にもとめていく運動をさらに大きくすることが必要です。

あらたな自治を職場から地域から

 かつてない改憲の危機、社会保障改悪に対して、私たちはどうすればいいのでしょうか。
 第一に、私たちは政治を変えられる。このことに確信を持つことです。
 全日本民医連は第46期、「非戦・人権・くらし」を大切にする政治と社会をめざすとりくみをすすめてきました。緊急行動提起や介護ウエーブでは、「安心して医療・介護を受けたい」という地域住民と、医療機関・介護施設の経営難や厳しい労働実態を訴える私たちの思いが重なって大きな運動となり、政治を動かす力になりました。
 第二に、いのち最優先の政治を実現する、あらたな自治を各地域で築いていくことです。この精神は、第47回総会(今年2月、岩手県盛岡市で開催)の特別決議にも盛り込みました。
 緊急行動でも明らかになったように、地域住民の切実な要求と私たちの運動が結びつくとき、社会を変える力になります。来年4月には、いっせい地方選挙もあります。国のいいなりになるのではなく、住民一人ひとりを大切にする自治を各地域でつくっていくことがもとめられます。
 私たちの法人・事業所も自治の単位としてとらえなおす。いのちを守ることを仕事にする医療・介護従事者として、自ら事業所や法人の運営にかかわり、生きいきと働くことのできる組織として発展させていくことが重要です。
 昨年、民医連はケアの倫理caféを全国ですすめました。医療、介護、家事、育児などのケアは、自分一人では生きていくことのできない人のニーズにこたえる実践で、相手によりそい、思いをくみ取る大切さなどを学びました。そしてケアは女性に押し付けられがちで、民医連も組織として変わっていく必要性を確認してきました。
 このケアの倫理を大切にし、職場内の自治を豊かにすることが、心理的安全性や政治に対する意見を出しやすくなることにもつながり、運動の力にもなると思います。
 3月19日には1万1000人、3月25日には2万4000人が「改憲を止めよう」と国会前に集いました。4月には、高市政権のもとでの改憲を許さない、新しい署名運動も始まります。
 いまの政治に危機感を持ち、変えたいと願う人は必ず地域にいます。その願いを束ねて対話と協同をひろげ、職場から地域からいのちとケアを大切にする社会と政治を実現するとりくみをひろげましょう。

(民医連新聞 第1849号 2026年4月6日号)