• メールロゴ
  • Xロゴ
  • フェイスブックロゴ
  • YouTube
  • TikTok

民医連新聞

民医連新聞

相談室日誌 連載599 包み込む支援 重層的支援体制整備事業 広島共立病院 谷口実咲季

 近年、「高齢」、「障害」、「子ども」「生活困窮」などの福祉制度の枠組みでは簡単に整理できない、さまざまな課題が複合した事例が増加しています。複雑な課題を丸ごと支援する国の「重層的支援体制整備事業」。今、交付金を大幅に削減する方針となっています。当院での重層的支援体制整備事業を必要とした事例を紹介します。
 自閉症のある50代のAさんは感染性心内膜炎となり、当院へ緊急搬送。両親、弟と4人ぐらしで、生活保護を利用しています。父親は聴覚障害があり、母親は体調不良ですが未受診、弟は就労していますが、軽度の知的障害があります。Aさんは作業所へ通所しながら、毎日、新聞を購入し収集していました。自宅は新聞紙で覆われ、とても生活できない状態でした。処分しようとすると暴れるため、両親も片付けることができませんでした。長年、作業所が心配していましたが、母親は「困っていません。迷惑がかかるので大丈夫です」と支援を拒否。福祉事務所のケースワーカーも具体的な働きかけは行えていませんでした。
 Aさんの入院をきっかけに、重層的支援体制整備事業で会議を開催。重層支援担当、障害福祉担当、高齢福祉担当、福祉事務所、作業所、地域包括支援センター、SWが参加しました。Aさんだけでなく、両親や弟の状況も共有し、課題を整理。支援者で役割分担し、自宅訪問も重ねました。継続的な支援の結果、両親との信頼関係構築もすすみ、両親は「自宅に帰ってきたら、Aの体調はまた悪くなってしまう」と不安な気持ちを話すようになりました。
 そして、Aさんを交えて相談し、障害者支援施設へ入所することになりました。自宅は支援者総出で片付けを行い、大量の新聞紙は行政の協力で処分できました。体調不良の母親は受診につながりました。
 重層的支援によって、地域で孤立していた世帯を包括的に支援することができました。ごみ屋敷、8050問題、社会的孤立などの複合的な問題を抱えた世帯は今後も増えていくと思います。このような複合的な問題は、今ある縦割りの福祉制度だけでは不十分です。制度の狭間を埋めるこの重層的支援体制整備事業をなくしてはいけないと強く訴えていきたいと思います。

(民医連新聞 第1849号 2026年4月6日号)