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民医連新聞

民医連新聞

全職員・共同組織とともに 医学生と学び合い対話を重ねる活動を

 絶対的医師不足や経営困難という厳しい情勢のなか、民医連はなにを大切にし、どのように次世代の担い手を育んでいくべきか。全日本民医連の山田秀樹副会長(医師部長)に、今期の医師部の課題を聞きました。
(聞き手・松本宣行記者)

民医連の後継者獲得と養成最重要課題に

 医学対活動は大きな困難に直面しています。コロナ禍の影響もあり、奨学生の数は伸び悩んでいます。その要因の一つは、コロナ禍の活動制限や事務職員の採用難により、医学生担当者の体制が縮小していることにあります。
 医学対活動は単に奨学生数を確保することだけではありません。法人や県連の幹部のみなさんには、これを経営の根幹にかかわる主課題であり、組織の最重要課題であると再認識していただきたいと思います。その先にこそ、民医連綱領、人権の視点、ケアの倫理を体現する医師集団づくり、そして民医連のいっそうの飛躍があるはずです。
 昨年12月、全日本民医連医学生委員会から「ケアの倫理と人権の視点の医師養成時代における医学対活動方針案」を提案しました。この方針案は、すべての医学生を対象とし、ひとりでも多くの医学生が民医連と出会う場をつくることなど、医学対活動で大切にしたい視点を全体的に捉えなおし、提案しています。今期を通して旺盛な議論を期待します。

医局全体のとりくみに大切文書に立ち返って

 医師が多忙で医学生と接する時間がないという課題もあります。43期に「未来に向かって民医連の医師と医師集団は何を大切にするのか」(通称「大切文書」)を出しました。文書では「民医連の事業所に多くの医学生が参加してくれるよう働きかける活動は医師の大切な仕事」としています。あらためて「大切文書」に立ち返って、今一度、医局内で対話を通じて合意形成していくことが重要です。

五感を通じて社会を自分事に

 3月20~22日、沖縄で「第46回民医連の医療と研修を考える医学生のつどい」を開催しました(左に記事)。沖縄で起きていることは、単なる基地問題ではありません。米軍による人権侵害や、それを放置する日米地位協定という構造的な問題があります。現地におもむき、現状を肌で感じることで、医学生が日本の政治課題を自分事としてとらえていく。こうした実感を伴う学び合いと対話こそが、共感の種となります。

自分の言葉が医学生を動かす

 医学対は医学生担当者だけの仕事ではありません。民医連の全職員にお願いしたいのは、自身の言葉で「民医連でのやりがい」を語ってほしいのです。
 私自身の経験ですが、医学部2年生の時に、民医連とは知らずに参加した病院実習で、もっとも印象に残ったのは、医師の話ではなく、振動病の患者とともに熱く語る若手事務職員の姿でした。
 学生はまだ医療現場や経営の詳細はわかりません。しかし、目の前の職員がなにを大切にして働いているのかという熱意は、必ず伝わります。みなさんが職場で輝いている姿を見せることが、学生の「ここで働きたい」という気持ちにつながります。

真の働き方改革の実現に向けて医師増やせ運動

 国は、働き方改革スタートに合わせて、労働時間にカウントされない「宿日直許可」を乱発し、見かけ上、当直業務にあたる医師の労働時間の削減をはかりました。この施策は絶対的な医師不足を覆い隠す手段にほかなりません。医師の自己犠牲で成り立つ医療は限界に来ています。3月16日、50代男性医師が過重労働による労災認定を求めた訴訟で、東京地裁は医師の長時間勤務や当直帯の労働実態などを踏まえ、労災を認めました。原告医師はまさに国の施策の犠牲者といえるでしょう。
 真の働き方改革、そして医師・患者の双方の人権を守るためには、「医師を増やせ」という根本的な運動が不可欠です。国は将来的に医師が余るとし、医学部定員を削減しようとしています。一方、全国知事会は国の施策に対して反対の立場です。医師不足で悩んでいる各自治体から声をあげていくというのは、私たちと連帯したひとつの運動です。地域医療を守れ、医師を増やせの声を地域から社会にひろげていきましょう。

まいた種はいつか必ず花開く

 医学生担当者のみなさんは、すぐに結果が出ないことに焦りを感じるかもしれません。しかし、評価を「入職数」という即物的な数字だけに求めなくともよいと思います。たとえすぐに民医連へ入職しなくても、10年後、20年後に合流してくれるかもしれません。あるいは、地域医療をささえる連携パートナーになってくれるかもしれません。日本の医療をよくする仲間が増えること自体が、大きな成果です。「将来に花を咲かせる種をまいている」と自信を持ってください。
 新歓期を迎え、実習に来る学生たちを、ぜひすべての職場の温かさで迎え、やりがいを語ってください。対話を重ねるその一歩が、私たちの未来をつくります。


医学対活動で大切にしたい視点

①民医連との出会いの場をつくる
 すべての医学生を対象とし、ひとりでも多くの医学生が民医連・社会と出会う場(民医連医療・介護の現場、当事者との出会いの場、価値観を交流する場)を全職員・共同組織とつくる。
②医学生運動との協力共同
 より良い医療の実現を求める医学生の主体的な学びをささえ、医学生運動に多くの医学生が合流できるよう促すとともに、医学生運動を牽引する医学生の成長を援助する。医学生が民主的に成長することと医学生運動の発展のために協力共同する。
③奨学生をはじめ民医連運動を担う後継者の確保と育成
 民医連とつながる医学生との学び合いと対話を通し、医学生とともに育ちあうなかで、民医連への理解と共感を深め「民医連を発展させ、ともに未来をつくっていく仲間」である奨学生の確保と育成をすすめる。また、県連レベル・全国レベルでの仲間づくりを行う。そのことを通じて新卒医師受け入れ200人のうち奨学生活動で成長した医学生100人を新卒医師として迎え入れる。


医療は平和のうえに成り立つ

第46回 民医連の医療と研修を考える 医学生のつどい
春のつどい in 沖縄

 3月20~22日、全日本民医連主催で、「第46回民医連の医療と研修を考える医学生のつどい」の集大成となる、「春のつどい」を沖縄県で開催しました。全国から総計262人が参加し、うち医学生は143人でした。3日間の様子を紹介します。(髙瀬佐之記者)

 第46回民医連の医療と研修を考える医学生のつどい(以下、46つどい)の年間テーマは「平和 ~ひとりひとりの人生から考える~」。戦後80年の節目に、未来の医療従事者として一人ひとりが「平和とは何か」を考えました。46つどいは、14人の事務局学生が、自らも学習を重ねながら企画してきました。

平和を考える

 開会あいさつは、大阪・田島診療所の青木淳さん(医師)。「大切な人、身近な人を思い浮かべ『平和』を考えてほしい。出会い、語り、新しい視点を得る機会に」と呼びかけます。
 開会プレゼンは、医学生のつどい事務局長の小金丸悠太さん(5年)。小金丸さんは、このつどいが医療や社会を幅ひろい視点で考える場と説明し、「医療は平和のうえに成り立ち、平和を考えることは医療の本質につながる」と参加者へ伝えます。
 1日目は、医学生のつどい事務局がこれまでの活動や学びを参加者へ紹介し、小グループ討論を行います。30グループとなった今回のつどい。各テーブルには医学生担当者や助言者として現役の医師も。学生と同じ目線で対話する様子に、会場もあたたかい空気に包まれます。
 夕食の後は交流会。全国各地の医学生や担当者と交流できるのも医学生のつどいの醍醐味です。お題ごとにテーブルを分け、学生が移動し対話します。「医学生担当者と話す」テーブルには6人の学生が。「民医連との出会いは高校生時代の医師体験」と口をそろえる学生たち。民医連医療の実践を現場で見せ、患者の社会背景を知る大切さを伝えてきた全国のとりくみが、民医連の未来につながっている証です。今回初めて参加した、医学生担当の船戸大誠さん(岐阜)は、「いっしょに学び、学生のやる気に感化され、やる気が出た」と話します。

民医連だからできること

 2日目は6つのコースに分かれて沖縄の歴史と平和を学ぶフィールドワーク。沖縄でかつて何があったのか、そして今何が起きているのかを学び、そこにいる一人ひとりの人生や、背景にある構造に目をむけることを目的とした時間です。
 嘉手納飛行場やシムクガマなど、全体で約30カ所にのぼる場所へそれぞれ赴き、最終日に自分がめぐった場所の感想や意見を班で共有します。中村早希さん(3年)は、「沖縄戦は現在も続いている。平和をめざす仲間がいることがわかってうれしい」と話します。

つどいを立ち返る場所に

 つどいも大詰め。3日目は小グループ討論で、「今って平和?」「戦後90年目をどんな形で迎えたいですか?」「それはどうしたら実現できるか考えよう」という質問を投げかけます。「安心して子どもを育てていたい」「世界から戦争がなくなっていてほしい」など、各グループで活発な議論が。
 閉会挨拶は、立川相互病院の奥野衆史さん(医師)。沖縄戦を経験している祖母から、「戦争をとにかく起こさないこと。それが一番大事」と言われたことを打ち明け、「つどいでの出会いや経験がひとつの立ち返る場所になってくれたらうれしい」と締めくくりました。
 参加した澤田晋介さん(6年)は、「学生同士や多職種で、やりたいことや夢を語り合える空間。既存の医療の枠組みを越え、困っている人の力になれる医師になりたい」と語ります。
 第46回医学生のつどい事務局代表を務めた山田早絵さん(5年)。民医連との出会いは高校生医師体験でした。「平和を一人ひとりの人生として身近にとらえ、参加者が社会のことを知り、行動しようと思ってくれたらうれしい」と話します。「患者といっしょに人生を歩むような『なんでも診れる医師』をめざしたい」山田さんの思いはまっすぐ前をむいています。

(民医連新聞 第1850号 2026年4月20日号)