相談室日誌 連載600 秋田・中通リハビリテーション病院 関谷 美紗子
一方の健康問題で生活破綻 途切れない支援体制と連携
脳梗塞のリハビリ目的で当院回復期病棟へ入院した80代女性のAさんは、重度の右片麻痺と失語症を呈していました。身寄りは80代の夫のみで、入院当日に夫と当院SWの初回面談を実施。面談時、夫は口数が少なく、衣服の汚れや尿臭が認められました。Aさんが家庭の金銭管理を担っていましたが、夫は経済状況を把握しておらず、各種未払いが判明します。第三者に財産管理の希望があり、管轄の権利擁護センターへ連絡。Aさんへの説明も試みましたが、失語症の影響で明確な意思確認は困難でした。また、地域包括支援センターへ夫の状況を報告し、見守り支援を依頼しました。
入院2日後、権利擁護担当者と夫の面談を実施。夫が成年後見制度の申立人となることに。しかし担当者が事前にアポイントを取り自宅訪問を試みるも夫の不在が続き、支援介入が困難となりました。面会予約外で夫が来院し、状況を確認したところ、面談の約束を認識しておらず、自宅でAさんの通帳を見つけ出し、年金で連日パチンコ店に通っていたことが判明。行政と権利擁護担当者の判断で、市長申立に移行する方針となり、Aさんの通帳は病室内で施錠管理としました。夫はたびたび突然来院し、生活費の工面に通帳の返却を求めるようになります。光熱水費の督促状を持参することもあり、夫に代わり各事業者へ支払い遅延の連絡をすることもありました。
夫は自覚が乏しく、包括の支援介入を拒否する状況が続きます。SWが都度生活状況を確認する対応を行い、フードバンクによる食料提供の支援につながりました。
Aさんの入院から7カ月後、後見人の選任で、Aさんは特別養護老人ホームへ入所しました。一方、夫は自転車で転倒し、右大腿骨転子部骨折を受傷。急性期病院へ入院し、養護老人ホームへ入所となりました。
本事例で、高齢者世帯では、生活機能や意思決定能力の脆弱化が顕在化しやすく、一方の健康問題が世帯の生活破綻につながるリスクが高いことを実感しました。秋田県は高齢化率40%を超える超高齢化地域で、本事例のような課題が増加することが予想されます。予測的視点を持ちながら関係機関と継続的連携を図り、支援が途切れない体制をめざしていきたいと思います。
(民医連新聞 第1850号 2026年4月20日号)
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