フォーカス 私たちの実践 なんでも相談できる診療所 北海道・桜ヶ岡医院 職員も成長し地域も強くなる 多職種協働のマネジメント
北海道・桜ヶ岡医院はすべての単位が家庭医専門医の診療で「なんでも相談できる診療所」として、地域のニーズに合わせた地域包括ケアの実践を多職種協働でとりくんでいます。昨年の第17回学術・運動交流集会で、鈴木誠さん(事務)が報告しました。
当院は、法人の医師不足で非常勤医師の診療、週替わりの医師体制で運営していた過去がありました。2020年にプライマリケア学会認定家庭医療専門医・指導医が院長として着任。それ以降はすべての診療単位が家庭医専門医となり、名実ともに家庭医診療所になりました。家庭医療・総合診療を実践する当院では地域のニーズに合わせた包括的ケアの実践を「多職種協働」でとりくんでおり、そのマネジメントについて考えました。
■気になる患者カンファ
当院は無床診療所で医師2人、看護師3人、事務4人、薬剤師1人です。一日の外来患者数は約50人です。
地域活動で「なんでも相談できる診療所」を、診療所のたよりで連載し、地域の友の会世帯に届けています。また「家庭医療・総合診療とは?」をテーマに医療懇談会の開催や地域包括支援センターとの連携、地域カフェに参加しています。
多職種協働の気になるカンファレンスは、すべての職種が職場内にある「気になるBOX」に事例を投稿し、月1回全職員で行っています。多職種から積極的に出されます。この間、事務から出された事例は、「予約日をよく間違える」「窓口の不払い」「自宅での血糖測定値が毎回同じ数字」など、ささいなできごとや違和感について。事務の発信事例から患者宅への訪問につながった事例もあります。
■患者に寄り添う
多職種協働のチカラを3つ紹介します。一つ目、経営活動です。診療報酬で、外来患者から様ざまな聞き取りが必要な外来データ提出加算を多職種の役割分担で届け出でき、前年比較で年間400万円増収。法人内の診療所にもひろがり、同じく400万円増収となりました。他県連の診療所からもとりくみの問い合わせがあり、北と南の連携も行われています。
二つ目に地域活動です。生活習慣病管理料、外来データ提出加算の算定により看護師問診での確認事項が増えたことが、「気になるアンテナ」につながりました。そのなかで患者の認知機能が気になる事例が多いことに注目しました。家庭医診療所として認知症の知識を高めること、認知症の方を地域でささえる必要性を課題として捉え、共同組織とともに地域まるごと認知症サポーター養成講座を開催し、地域から33人の参加がありました。
三つ目は患者に寄り添うとりくみです。自宅でもデイサービスでも酸素を外している患者への対応を職員で考えました。長年友の会の役員でもあり、当院のことが大好きだったこともあり、メッセージ入りの手づくりキーホルダーを作成しました。「大事につけるよ」と自宅でもデイでも酸素を外さなくなり、労作時の息切れも減少し、活動範囲もひろがりました。
■意見を尊重し合う気風
多職種協働のマネジメントは医師、看護師、薬剤師、事務の集まりをチームと捉え、それぞれの職種の強み、個人の強みを生かし切ること、職種間のヒエラルキーを感じないように、意見を尊重するなど、お互いの職種への敬意を大切にするチームビルディングを日常診療のなかから意識しています。看護師、事務が互いに評価し、また院長が「院長コーヒータイム」という院長との面談を開いて、スタッフ全員の価値観ややりがいを院長が把握し、コミュニケーションをとっていることも職員の心理的安全につながっています。
多職種連携で求められるコンピテンシーという概念があります。当院職員は日常診療のなかで患者、家族を中心にそれぞれ役割を果たしていると言え、コンピテンシー能力が発揮されていると考えます。自分たちは何ができるのか、地域全体で何ができるのかを考え、多職種協働で具体化していくプロセスに職員は非常にやりがいを感じています。
「自分たちも成長でき、地域も強くなる」多職種協働の実践は、民医連医療の実践そのものと考えています。
(民医連新聞 第1851号 2026年5月4日号)
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