相談室日誌 連載601 福岡・戸畑けんわ病院 小山 朝生
身寄りない患者に必要な支援 県連部会実態調査の事例から
福岡県連SW部会では、2024年6月から1年間、「身寄りのない方に関する事例の収集と分析」という実態調査を行いました。客観的なデータとして可視化し、現場の課題を確かめる目的としました。「身寄りのない方」の事例は343件に上りました。
そのうち回復期リハビリテーション病棟の患者(80人)の分析では、生活保護を利用している60代男性を中心とした、深刻な孤立の姿がありました。
60代の男性の事例です。脳梗塞を発症し、路上で倒れているところを救急搬送。金銭面でのトラブルから昔から家族とは折り合いが悪く、連絡が取れた親族は「死んだときだけ連絡をください」とかかわりを拒絶しました。男性は非常に少額の年金で、健康保険料、家賃、公共料金のすべてを滞納し、借金も抱えていました。日々の食事は菓子パンや食パンのみでしのぎ、自宅は「ゴミ屋敷」状態で、自ら人とのかかわりを遠ざけ、誰にも相談していませんでした。入院をきっかけにSWが介入し、生活保護を申請。しかし、病気の後遺症で麻痺が残り、一人での生活は困難な状態です。介護保険を申請し、施設入所への準備をすすめました。SWが公共料金の支払いを代行し、入院生活に必要な物品の購入を支援するなど、対応を積み重ねました。市長申し立てによる成年後見制度の申請を行い、法的な権利擁護の土台を整えて施設へとつなぐことができました。
現在の社会保障制度は、「家族がささえること」を前提につくられています。しかし、単身世帯の増加や地域・親族とのつながりの希薄化という社会の大きな変化のなかで、制度の「隙間」に取り残される人びとが急増しています。また、成年後見制度や福祉サービスは、内容もわかりづらく手続きも複雑です。退院後に支援がなければ、一歩外へ出ればふたたび孤立し、生活が立ち行かなくなるリスクと隣り合わせです。
今回可視化された実態は、これからの制度改善や地域連携を考えていく上で、大切な土台になると思います。「身寄りのない方は制度に結び付きにくい、必要な支援がつながりにくい」という実態は人権問題にもつながるという気づきを現場から発信し続けていくことが重要だと感じています。
(民医連新聞 第1851号 2026年5月4日号)
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