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民医連新聞

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診察室から 医療の現場に忍び寄るAIの影

 先日の外来でのこと。毎月通院中のかかりつけ患者が、診察の途中でこう言いました。「素人考えですが、今の症状にこの薬は効きませんか。AIで調べたら有効だって」。内心「来たな」と思いながら話を聞くと、気になる症状や薬があると生成AIに尋ねるのが今は日課になっているとのこと。「ググる(=Googleで検索する)」ではなく「AIる(エイる、=AIで検索する)」という時代が、医療現場にも静かに忍び込んできたと実感しました。
 ネット検索情報をうのみにして「自己診断」してくる患者は以前からいましたが、AIに置き換わると話が変わってきます。ネットにはうそか本当かわからない情報が混在していることを、多くの人はなんとなく知っていますので、「一応確認してみよう」という感覚で受け取る人も多い。ところがAIの回答は違います。流(りゅう)暢(ちょう)で論理的、自信に満ちた文体で返ってきます。患者が「この薬は効きますか」と問えば、AIはその前提に乗っかって答えを返しやすい。思い込みにも話を合わせ、あたかも根拠のある情報のように見せてしまいます。
 ハルシネーション―AIが事実と異なる情報を自信満々に生成する問題―は未解決です。これからの外来では、生活指導・服薬指導に加え「AI指導」も必要になるのではないかと、私は本気で思い始めています。「AIで調べた内容は、必ず私に確認してから判断してください」「AIは便利だけど、治療の自己判断には使わないで」。そんな一言を診察中に自然に伝えていく時代が来たと感じています。
 そして、これは患者だけの問題ではありません。医療従事者側もAIリテラシーを持つことが今や必須だと私は思います。どこに限界があるか、どんな誤りを犯しやすいか--それを知らずに「AIが言っていたから」と判断に使うのは、患者と同じリスクを我われが抱えることになります。診察室から、私はそのことをあらためて実感しています。

(菊地修司、茨城・城南病院)

(民医連新聞 第1852号 2026年5月18日号)