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民医連新聞

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これで学ぶ 暮らしのなかの社会保障 ②人類の進化の歴史から「生命の尊厳」を紐解く

 人間が属する「霊長類」はおよそ700万年前に現れました。人類の直接的な祖先の「現生人類」は約20万年前に出現し、社会性を進化させ、芸術・文化を育みました。人類が飛躍的な進化を遂げた理由は、二足歩行することで頭を身体全体でささえ「垂直」に保ち、頭(脳)を大きくできるようになったからです。
 猿人の脳容積は400~500cc程度でしたが、現生人類の大人の脳の容積は平均1400~1500ccで、進化の過程で脳の容積は約3倍にまで大きくなりました。
 一方で、人間は二足歩行したことで、骨盤から内臓が脱落しないように骨盤腔内を狭くし、骨盤の筋肉を発達させ、四足歩行動物よりも「産道」が狭くなってしまいました。人間は、「脳の容積」が大きくなったにもかかわらず、産道が狭くなったため、他の動物に比べ「未成熟」のまま小さく子どもを出産せざるを得なくなりました。
 四足歩行の哺乳類の出産を観察すると、誕生から数十分程度で立ちあがり駆け出すことから、十分に成熟してからの出産だとわかります。自然界では常に他の動物から襲われる可能性があるため、危険回避能力を備えている必要があり、出産直後から生存「本能」が存分に発揮されます。
 一方、人間は未成熟で生まれることから、「本能は後退」し遺伝の奥底に潜在化し、他の動物に比べ「十分には機能しない状態」のままです。そのため、産みの親だけで育児をすることは困難となり、家族、親族、地域などの多種多様なコミュニティーを巻き込み社会的に育てる必要性が生じることで、「社会的動物」と呼ばれるようになりました。
 多くの動物は、遺伝的要素や自らが置かれた環境によってその生涯は決定されますが、人間は、遺伝的要素を基底にしながらも社会的に働きかけられることで常に発達し、自然・社会環境をも変えることもできる唯一の存在となりました。
 人間は未成熟な状態で生まれるが故に、社会的な働きかけで人格が形成され能力の発達が可能となります。つまり、社会的な協力・協働によってしか「人格」が形成されず、「能力」の発達もしません。協力・協働は、その時どきの経済・文化・物理的影響を受けることから、人間の「人格」・「能力」は、兄弟間であっても極めて異なります。いわば、個々人で異なることが「人格」・「能力」の特徴で、また、あまりに違うが故に、社会共同体において協力・協働を無視して振る舞えば、弱肉強食社会を肯定しかねません。
 人間は、常に「互いが違うこと」、「互いを尊重する」ことを意識の中心に据えることが重要で、正にそれこそが、生命の尊厳と基本的人権を育むことになったのです。

社会保障研究者・水彩画家
芝田英昭

(民医連新聞 第1853号 2026年6月1日号)