社会的背景知ることが人権を知ること
東海・北陸地協 新医学生、奨学生新歓企画
不定居住者フィールドワーク
東海・北陸地協は、医学生と多職種の奨学生、つながり学生を対象とした新入生歓迎企画を開催してきました。テーマは「医療者が人権について考えるとは~医療系学生の共通点って何? 」。全2部構成で行われ、第1部は5月12日にオンラインで学習会を実施。5月24日に第2部として愛知県で「不定居住者フィールドワーク」を開催し、14人が参加しました。(髙瀬佐之記者)
「生活保護をイメージで判断せず、誰でも等しく人権があることに気づいて欲しい」。そんな思いで開催した本企画。今回のフィールドワークは、NPO法人ささしまサポートセンターの協力のもと行いました。同センターは、路上生活者、生活困窮者がその人らしい生活を営めるよう、ボランティアの医師・看護師による医療相談や生活支援などを行っています。
愛知・北医療生活協同組合の職員で、センターの理事を務める松島周平さんは「私たちは伴走型のかかわりを大切にしている。生活保護につなげればいいという話でもない。貧困というフィルターを通さず、人として対話してほしい」と学生に呼びかけました。
現在、民医連内外から5人の医師がセンターの活動に参加しています。その一人、愛知・名南ふれあい病院の早川純午さん(医師)は、全日本民医連が11年前に行った、名古屋市路上生活者の精神保健調査を紹介。「路上生活者の半数近くに知的障害や、精神疾患がみられた。なぜ路上で生活せざるを得ないのか。社会的背景を知ることが、人権を知ることにつながる」と学生に呼びかけました。
人として向き合う現場に学ぶ
食料・衛生用品を手に、いよいよ訪問へ。医学生たちは路上生活者と目線を合わせながら積極的に対話を重ねていきます。しばらくすると「血痰が出る」と訴える人の姿が。同行していたボランテイア医師が症状を聴き、受診を呼びかけます。
路上で生活をする人びとの事情はさまざまです。医学生からの問いかけに、快く応じてくれる人も。センターが長い時間をかけ、信頼関係を築いてきたことがうかがえます。
路上生活者が多く暮らす、名古屋高速道路下には「第20回アジア競技大会」の横断幕が。無造作に置かれたバリケードが目立ちます。「追いやられた」という言葉に、学生たちも驚きます。異様に積まれたバリケードは、見たくないものにふたをし、本来見るべき社会の問題や現実から目を背けているように映ります。
無知が暴力に
フィールドワーク終了後は、感想交流を実施。感じたことや、「なぜ医療従事者が人権を意識しないといけないのか」をテーマに参加者全員で思いを共有します。
学生からは「『路上生活者』という色眼鏡を外し『人としてみる』という意味を実感した」「今の生活を『自由』と表現をしていることに衝撃を受けた」など、活発な意見が。近藤和さん(2年)は「一見、路上生活から抜け出せそうに見える人もいた。一歩を踏み出せない背景には、社会の生きづらさがあると感じた」と話します。黒木真唯さん(2年)は「路上生活者は『努力不足』と言われがちだが、努力する機会そのものが奪われていた可能性もある。背景を知ろうとする視点を持ち続けたい」と語りました。
岐阜・みどり病院の大塚健太郎さん(医師)は「知らなかった、見えていなかった。そうした無知が一番怖い。見えない貧困に我われ医療従事者がどうかかわるか問われている」と強調しました。松島さんは「路上生活にいたる背景には、『働かなければならない』といった社会規範の強さもある」と指摘。「何が必要かということと合わせて、誰が必要なのかを考えてほしい。医療従事者にはその『誰か』になってほしい」と呼びかけました。
今回の企画担当者は、「戦前の無産者診療所の源流をふり返り、今こそ『人権(ひと)を診る』実践が求められている」と語りました。
ささしまサポートセンターは市民からの寄付で運営されています。詳細はこちらから
(民医連新聞 第1854号 2026年6月15日号)
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