私たちが求めるケア ⑦正当な方法で声をあげ、生きることができる社会へ 文/芦野正憲
6月に埼玉県内で60歳の男性が、母親の支援を担当し訪問してきた介護支援専門員(ケアマネジャー)を殺害し、自身も首を刺して死亡した事件が起きました。状況や家庭環境はわかっていませんが、痛ましく残念な事件です。厚生労働省は事件の二日後に全国に通知を発出しました。安全対策の周知・徹底、利用者宅を複数人で訪問する経費を事業所補助の対象とする、など案内がされました。
このような事件は起きてはいけないことですし、顧客(利用者や家族)のハラスメント(理不尽な要求や暴言、過剰なクレームなどの迷惑行為)対策が叫ばれるなか、とりくみをすすめることは必要です。ですが、事件が起きる原因や背景、事件にいたる家族の思いを推し量る社会になっているのか、支援制度が用意され、周知されているのか疑問を感じます。
介護殺人や心中、自殺は簡単に起きてしまいます。周囲の無理解・無関心、誤解や偏見・差別、経済的困窮、孤立、将来に対しての不安、自分だけでがんばるしかないという絶望感…が積み重なり引き起こされていると思います。
先月、近隣の市においても老老介護のなか、夫が妻を殺害する事件が起きています。ですが、介護殺人が起きても国はその都度通知を出したり、対策を強化する動きは見られません。当たり前のように日々が過ぎ、事件はすぐに忘れ去られていくことでしょう。
認知症の人と家族の会は昨年「認知症の人とともにある家族の権利宣言」を公開しました。人として尊厳が守られ、自分の人生をあきらめない権利が尊重され、安心してくらせる支援を受ける権利を求め、社会全体で支えられるよう、宣言がまとめられています。
介護をする側も受ける側も自分の生活を維持し、正当な方法で声をあげ、生きることができる社会となるよう、権利宣言をひろめていく必要性を、最近の事件を聴いて強く感じました。
あしの・まさのり 認知症の人と家族の会 福島県支部郡山地区会
(民医連新聞 第1855号 2026年7月6日号)
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