これで学ぶ 暮らしのなかの社会保障 ③「一部負担」を、「窓口負担」「自己負担」に誤用!
2019年に『医療保険の「一部負担」の根拠を追う』(自治体研究社)を上梓し、いわゆる「一部負担」、「窓口負担」、「自己負担(患者負担)」概念の違いを明確にしました。しかし、メディアや医療機関に加え、国や自治体ですら誤用が多々見受けられます。
では、法律では医療機関受診時の負担をどのように規定しているのでしょうか。国民健康保険法42条では、「保険医療機関等について療養の給付を受ける者は、その給付を受ける際、次の各号の区分に従い(中略)、一部負担金として、当該保険医療機関等に支払わなければならない」としています。また、健康保険法では74条で「保険医療機関又は保険薬局から療養の給付を受ける者は、その給付を受ける際、(中略)一部負担金として、当該保険医療機関又は保険薬局に支払わなければならない」としています。もちろん患者が医療機関などで支払う負担は、「一部負担」だけではありません。あくまでも「一部負担」は、「保険が適用される療養の給付」に対して年齢等による区分で1~3割の負担が求められる部分をさすのみですが、患者は別途「保険給付外負担」も求められます。したがって、「窓口負担」といった場合は「一部負担と保険給付外負担を合計した金額」をさすことになります。
たとえば、東京都保健医療局ホームページでは、「窓口負担」と呼称し「医療機関にて受診した際に窓口で支払う負担額の割合」だと説明しています。しかし、これでは患者は医療機関で必要となった医療費の一定割合しか負担していないかのような錯覚に陥り、保険給付外負担が存在することを見落としてしまいます。
ましてや、埼玉県のホームページの「国民健康保険について」では、「被保険者の自己負担割合」として説明しているように、患者に「健康自己責任」を押し付ける表現となっていて、医療機関に掛かることに「うしろめたさ」さえ感じさせる表現です。
医療機関、国や自治体は、法定されている呼称を適宜変えて使用するのではなく、国民の混乱を避ける意味でも正確に使用すべきではないでしょうか。ただ、正確な情報を伝える使命を持ったメディアでさえ、「一部負担」を使用している例の方が少ないのが実情です。
日本では、1961年に「皆保険体制」が構築され「だれでも、いつでも、どこでも保険証一枚さえあれば医療機関に受診できる」ようになりました。その体制をささえているのが、社会保険としての医療保険です。社会保険では、国民は事前にリスクが勘案された上で保険料を支払い、加えて公費なども投入されているのにも拘らず、医療機関を受診した際にさらに「一部負担」や「保険給付外負担」を求めるのは、費用の二重取りです。これらの負担があることで受診を控えることになってしまえば、世界に冠たる「皆保険体制」は崩壊します。今求められているのは、「一部負担」の縮小・廃止ではないでしょうか。
社会保障研究者・水彩画家
芝田英昭
(民医連新聞 第1855号 2026年7月6日号)
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