診察室から 小さな声を、社会へ届ける
診察室で患者とむき合っていると、病気そのものよりも、生活の重さが先に見えてくることがあります。薬を増やせばよい、検査をすればよい、というだけでは解決しない困りごとです。「運転免許を返納して通院が大変になった」「年金や保護費だけでは食費を切り詰めるしかない」「家族の介護をしているので入院できない」。生活習慣病の背景に経済的な事情が隠れていることがとても多いと感じます。そんな言葉を聞くたびに、医療は診察室のなかだけで完結しないのだと感じます。
2月に全日本民医連定期総会に参加しました。経営の厳しさ、人手不足、地域で求められる役割など、課題は山積みでした。一方で、訪問診療や退院支援、無料低額診療事業、地域の相談活動など、それぞれの職場で「目の前の人を放っておかない」実践が続けられていることも確認できました。どの報告にも、制度のすき間に置かれた人を何とかささえようとする職員の姿がありました。医療や介護の制度が複雑になるほど、その人に必要な支援につなぐ力が、現場には求められているのだと思います。数字や方針の奥に、一人ひとりのくらしと願いがあることを忘れてはならないと思いました。大きな方針も、もとは一人の患者さんの小さなつぶやきから始まるのだと思います。
最近、若い職員や医師と話す機会が増えました。忙しさのなかで悩みながらも、「もっと地域に出たい」「患者のくらしを知りたい」「安心して働ける職場にしたい」とがんばる姿に、こちらが励まされます。職員が大切にされてこそ、患者を大切にできる。そんなあたり前のことを、あらためて確認する日々です。
医療を守ることは、くらしを守ることです。そして、くらしを守る医療は、現場の声を聞き、職員同士がささえ合い、地域とつながることから始まります。診察室で聞いた小さな声を、職場へ、地域へ、そして社会へ届ける。そんな一歩を、これからも大切にしていきたいと思います。
(財津翔、熊本・くわみず病院)
(民医連新聞 第1855号 2026年7月6日号)
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