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民医連新聞

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相談室日誌 連載606  つなぎ深める機会と生活場所 家族とつながる退院支援(高知)

 Aさんは60代後半で脳性麻痺・聴力障害があり、内縁の夫と二人暮らし。自宅前で転倒し、半年程、夫がおむつ交換などの介護を行っていましたが、訪問したAさんの兄が見かねて当院を受診し、左大腿骨頸部骨折偽関節で入院。兄より「働かず、Aの年金頼りの夫と引き離したい」と施設入所の希望がありました。兄の説得で、Aさんは渋々と施設入所を決心しようとしますが、「夫と離れるのは嫌」と涙しました。兄は夫と離れないなら兄妹の縁を切るほどの覚悟で、三人の関係を思うとSWも葛藤し、支援に難渋しました。そこで、Aさん・夫・兄と話し合い、Aさんと夫が離れがたい関係を受け止めた上で、“Aさんといっしょにいるためには夫の自立がまず必要”と夫へ働きかけ、共通認識を持ちました。
 話し合い後、夫の行動が変わり、働き先を探し、生活保護の相談に出向いてきたとSWに声が掛かりました。夫は身寄りがなく、新しくアパートを借り保護を利用しながら働き先を探すことになりました。不動産会社からの提案で、Aさんも夫と同じアパートの別室へ転居できるよう、多職種と連携し環境・サービス調整をすすめました。互いに一人暮らしの再出発になりますが、夫の通い介護と、安否確認や通院は兄の支援で新たな生活を始めました。ケアマネジャーや福祉事務所のケースワーカーなど、Aさんと夫をささえる関係者とのつながりも生まれました。
 Aさんと筆談を交え、くり返し面接するなかで、夫とは引き裂けない関係にある一方で、兄と絶縁になれば将来独りになるかもしれないと不安を抱いていました。夫の経済的自立でAさんといっしょに過ごせる希望が見えたため、施設入所から夫の支援に切り替えました。夫の支援で、Aさんが自身とむき合い、Aさん兄妹との関係を絶たないことにもつながると考えました。
 生活場所の選択の岐路に立ち、危機を乗り越える過程で、本人・家族の関係が深まることもあります。夫・兄といっしょに通院するAさんに会うたびに家族の深い結びつきを感じます。互いの関係をつなぎ深める機会を逃さないこと、生活場所の選択が関係性に影響するのか着目し、生活を見据えてかかわることを大切にしたいです。

(民医連新聞 第1856号 2026年7月20日号)